Read the English version published on May 18, 2020.
本稿は、ブルームバーグターミナルに最初に掲載されました。
テクノロジーはバイサイド企業において従来の枠組みにとらわれない役割を果たすようになっており、多くのヘッジファンドや資産運用会社がこれを競争における優位性の中心的要素と認識しています。こうした変化は、各社が投資の優位性を追求する中で生じており、企業幹部が効率を高め、コストを削減し、新たな価値を創出する方法を模索する中、利幅改善圧力によって促進されています。
多くの企業では、こうした状況は、テクノロジー部門の他部門との関わり方の変化につながっています。資産運用会社や投資会社の最高技術責任者(CTO)が負うさまざまな責任は複雑で、しかも進化しています。今のところはまだオペレーションの管理やインフラが中心かもしれませんが、多くの企業は経営戦略への関与など、より多くのことをCTOに期待するようになっています。
ブルームバーグが米国のバイサイド企業のCTOを対象に最近行ったインタビューでは、テクノロジーにこれまで以上に重点が置かれる中で、このダイナミックな役割がどのように発展しているのかが明らかになりました。今やテクノロジーとデータは顧客に価値を提供するための原動力であり、革新的な変化を推進することはCTOの最重要事項の1つになっています。ブルームバーグの調査では、CTOが自動化を推奨し、AIと機械学習のイニシアチブを共同で推進し、社内のクラウド移行計画について重要な意志決定者としての役割を果たしているということが分かりました。
しかしCTOの戦略的パートナーとしての重要性が高まっているからといって、日常業務における役割が軽くなるわけではありません。業務を滞りなく進め、セキュリティ上の問題でリーダーシップをとり続けなければいけないため、CTOは常に多忙を極め、リソースが枯渇することもあります。人材不足や人材流出のため、多くのCTOにとって、業務に支障をきたさずに通常のハードウエアやソフトウエアの更新を取りまとめることすら難しくなっています。変革を主導して成果を上げるのが困難なのは言うまでもありません。
リソースを拡充すべき理由を会社に説明すれば状況は改善するかもしれません。しかし現在の環境では、会社のサービス関連の計画と戦略計画の双方にテクノロジーをどのように組み込むかを慎重に検討することも必要です。一部の企業は依然としてテクノロジーをイノベーションの材料ではなくコストセンターとみなしており、インフラ刷新を任されたCTOに難しい問題をもたらしています。新たなテクノロジーへの投資では、効率や固定費を重視するべきなのでしょうか。それとも、新しい取り組み方の後押しとなるのでしょうか。
こうした優先事項のバランスを取ること、そしてそれを容易にするようなカルチャーの変化を促進することが、2020年のCTOにとっては重要でしょう。
事前対策型と事後対応型の考えを織り交ぜることが、ほぼすべてのCTOに求められます。社内のさまざまなステークホルダーはそれぞれ異なるものを必要とし、異なることを期待しています。CTOは特定のソリューションの実行や考案を求められたときと、リソースを調達して自ら実行したい独自のアイデアがあるときでは、異なる対応を取る必要があります。
多くのCTOにとって、特にITやサイバーセキュリティの難しい問題に深く関与しているCTOにとって、「事後対応型の支援」や、いわゆる「消火活動」のパターンからしばらく抜け出して、付加価値を生む、または変革を起こすイニシアチブに取り組む時間を確保するのは困難です。