Read the English version published on February 01, 2021.
本稿はブルームバーグ インテリジェンスのアナリストであるMike McGloneが執筆し、ブルームバーグターミナルに最初に掲載されたものです。
今、世界では政府債務残高(対GDP比)の上昇、量的緩和、低金利が長期化し、不確実性が高まっています。こうした中、2020年に良好なパフォーマンスを見せた金が2021年も他の多くの資産を上回るパフォーマンスを継続する環境が整っていると見ています。ただ、米株式市場が史上最高値を付けている点は、過去のサイクルにおけるGDPや商品市況との相関性とは違った動きとなっています。もう一つの新たな動きはこれまで金が占めていた準備資産の地位にビットコインがつき始めていることです。デジタル化の動きは脱炭素化および電化の促進につながるため、エネルギー価格には逆風となりますが金属価格には追い風となります。
株式市場が上昇を続けコモディティへの依存度が高まる中で、ブレント原油は1バレル55ドル近辺で下振れリスクがあると見ている一方、銅は1トン8000ドル付近で底堅く推移すると見ています。
化石燃料価格は下落の可能性
新型コロナウイルス感染拡大以前から続く化石燃料価格の低下傾向が反転するのではないかとの期待は実現しないと考えます。技術の急速な進歩のおかげで供給が増加しコストが減少する一方で、需要側には変化が見られるからです。この傾向は今後も継続すると考えられることから、コロナ以前の日常に戻ることができたとしても化石燃料価格はさらに低下すると見ています。
原油価格は引き続き低下傾向
新型コロナウイルス感染拡大以前から続く原油価格の低下傾向は今後も継続し、トレンドラインの下値抵抗線付近まで下げるでしょう。価格反転には、OPECの減産継続、世界需要の急速な拡大、株価上昇が同時に起きることが必要と考えます。OPECの供給余力が過去最高水準にあり米国のシェール生産コストが低下を続ける中でリモートワークや脱炭素化が進んでいることから、需要が新型コロナウイルス感染拡大以前の水準に戻る可能性は低いと考えます。
下のチャートをご覧ください。ウエストテキサスインターミディエイトの価格とブルームバーグエネルギースポットサブインデックスはともに20四半期移動平均に近づき、さらなるダウンサイドリスクが高いことを示しています。また、ブルームバーグエネルギーサブインデックスのトータルリターンのパフォーマンスも下降トレンドにあり、これを反転させる要因は見当たりません。
金価格は今後も堅調に推移
低金利と世界的な量的緩和の継続により、金価格は他の多くの資産をアウトパフォームして上昇を続ける環境が整っています。株式とは異なり、金は2020年の底値から15%回復しています。金価格は今後も他のコモディティ、特に銅をオーバーパフォームして上昇を続けると考えますが、ビットコインへの資金流入が増加しているため、ビットコインと組み合わせた分散投資が望ましいと考えます。
金とビットコインは他のコモディティをアウトパフォーム
今後も金価格の上昇が見込まれることから「長いものには巻かれろ」で行くべきと考えます。投資家の望みは詰まるところ保有資産の価値を少しでも高めることです。2020年、金価格は25%上昇し他のほとんどの資産の上昇率を上回っていたことも、金への信認を高める要因です。下のグラフを見ると、ブルームバーグインダストリアルメタルスポットサブインデックスの上昇幅は、金融危機以前から金の上昇幅を下回っていたことが分かります。今後もこの傾向は変わらないでしょう。G4各国の中央銀行のバランスシートが対GDP比で拡大し続けていることも金価格には追い風となります。
技術の進展、脱炭素化、電化の促進も、金価格がエネルギーや農産品価格を上回って上昇する追い風となります。また、マクロ経済環境も追い風ですが、ビットコインとの組み合わせがより安全かもしれません。
トウモロコシ、大豆、小麦価格は直先逆転で2012年のピークを思い出させる展開
穀物価格は過去10年近くほぼ横ばいで推移しており、今後も米国中西部のコーンベルト地帯が豊作で十分な供給が確保されれば同じ状態が続くでしょう。干ばつ等の影響がなければ、中国の強い需要が米国の輸出により相殺される形が続くと見ています。
農産品価格は2008年からほぼ横ばい
2021年初めにここ数年の高値を付けた農作物価格は、ここから先同じようなペースで上昇を続けるよりは反転するリスクが増大していると考えます。需給の影響を受けやすい穀物の需要は毎年の価格に影響を受けます。2121年もコーンベルト地帯は豊作で十分な供給が見込まれると予想しています。グラフからはブルームバーグアグリカルチャースポットインデックスが2008年の水準に戻りつつあることが見て取れます。人口増加とそれに伴う需要増加に生産が追いついているのは技術の進歩が主な理由です。
アグリカルチャーサブインデックスのトータルリターンは投資家を落胆させる水準で推移しており、投資やインフレヘッジを目的とする資金流入は抑えられるでしょう。大豆価格は今後も1ブッシェルあたり11ドルから14ドルのレンジで推移すると見ています。
本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。