【端末活用術】アジアのAT1債市場、回復に苦闘

Read the English version published on May 01, 2023.

背景

永久債市場は、最近の信頼性を巡る市場の混乱からの回復が遅れています。永久債は「偶発転換社債」や「その他ティア1債」としても知られています。この破綻により、同行が発行した永久債170億ドル(約2兆3000億円)が無価値となりました。

アジアでのAT1債の売り出しは、4月の三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)による発行が成功裏に行われたにもかかわらず、今年70%以上減少しています。世界的に見るとAT1債の発行は37%減少しており、アジア市場の減速がより顕著となっています。銀行が最初の償還可能日にAT1債の借り換えを行う意思があるかどうかが不確実な中、投資家の態度は慎重です。アジア太平洋地域では年内にコール日を迎えるAT1債は91本に上ります。

AT1債は偶発転換資本証券(CoCo債)とも呼ばれます。これは、AT1債が株式に類似するものとして扱われ、銀行資本が一定水準を下回る事態となった際にはティア2債よりも先に損失を被るためです。CoCo債は通常、初回コール日に借り換えが行われると考えられていますが、必ずしもそうとは限りません。

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論点

アジア太平洋地域におけるAT1債の発行は、2021年10-12月(第4四半期)に510億ドルでピークに達してから大幅に減速しています。また、SMFGが買収に際してクレディ・スイスの株主に支払いを行い、AT1債保有者は除外された点についても論争が生じています。不当に扱われたと債券保有者は主張しており、複数の裁判所での提訴に至っています。

ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のクレジットアナリスト、Rena Kwokは、「クレディ・スイスのAT1債の無価値化を受けて債権優先順位に疑念が生じており、銀行によるAT1債の発行は中期的に減速する可能性がある」と指摘しています。また、「予見可能な範囲で言えば、AT1債による銀行の資金調達は、このような追加的なリスクを投資家が織り込むため、よりコスト高となるだろう」とも指摘しています。

日本の金融機関においては、過去3カ月間にAT1債利回りが平均で22ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇しました。オーストラリア、タイ、およびインドネシアの金融機関では100 bpを超えるより大幅な上昇となりました。一方、アジア太平洋地域で2番目に発行が多い韓国では、平均で76bp上昇しました。

SMFGのAT1債への需要が高まっていることやコール日が前倒しされていることからは、投資家がより短期の債券を選好し、潜在的な信用事由を回避している状況が示唆されます。5月には、韓国の釜山銀行とJB金融持株(JBファイナンシャルグループ)、SMFG、中国工商銀行、および台湾の多数の銀行がAT1債の次回コール日を迎えます。

追跡

ブルームバーグのSRCH、LEAG、FIW、RVの各機能を活用すると、アジアのAT1債の発行状況を分析できます。各機能に基づく関連記事を講読するには、ターミナル上でNSUB FFMSTORYを実行してください。

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本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。

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