2019.09.17

社会要請としての「働き方改革」に直面する企業

9月17日、ブルームバーグでは「日本企業によるCLS決済の活用について」と題し、CLSおよびデロイトトーマツコンサルティングと共催でセミナーを開催いたしました。現在、事業会社が直面する社会要請としての「働き方改革」を受け、ブルームバーグではどの事業会社もチームメンバー1人当たりの労働時間の短縮化や業務効率化は、避けて通ることのできない課題と認識しています。そのような中、CLS決済 (Continuous Linked Settlement: 下記参照) が為替決済における財務高度化の手段になり得るかをテーマに、専門家による解説、日本企業による導入事例、パネルディスカッションおよび会場参加者とのQ&Aを通し「CLSの有効性」を考察しました。

事業法人がCLS決済を活用するメリット

はじめに、CLSの宮崎氏より、事業法人がCLSを活用するメリット、始めるための要件、そもそものCLS決済の仕組みやセトルメントメンバー、サードパーティ・サービスプロバイダー(TPSP)の役割について解説いただきました。また、顧客を決済リスクから保護するCLSのペイメント・バーサス・ペイメント(PVP)の仕組みを通じた外為取引の同時決済の利用は、BIS主導のもと2017年に制定されたグローバル外為行動規範に準拠している点も強調されていました。

続いて、2018年に事業法人向けサードパーティ・サービス(TPS)の取扱を開始した三井住友銀行の川越氏より、CLS導入のメリットについての説明がありました。銀行だけでなく事業会社でもCLSのペイメントネッティング効果は有効で、最良執行の追求のために現在複数の銀行と行われている莫大な量の同社間トランスファーが大幅に削減できることや、資金管理や事務の大幅な効率化が図れることに触れていただきました。

事例共有として、三井物産の坪井氏より、CLS決済導入に至った背景や経緯が紹介されました。経済効果の観点からと「脱・自前主義」からの最適化に取り組む同社は「標準化」を主要なコンセプトとし、公共インフラやSaaSの強みを活用することに重点を置いてらっしゃいました。当初CLSは「金法のツール」で事業会社は活用できないとの思い込みがあったものの、海外事業会社の採用例を知ったことがきっかけとなり、資金決済先の集約化、ネット決済化(通貨毎、決済日毎)、同時決済化を決断。業務効率化とリスク軽減を実現なさった成功例を共有して頂きました。

ブルームバーグがサポートする為替ライフサイクル:
為替電子取引 (FXGO) /
約定マッチングシステム (FX CMS)

ブルームバーグからは、FXGOとFXCMSを活用した事業法人の業務効率化ソリューションを紹介しました。特にFXGOでの最良執行やFX CMSによる約定照合の自動化によりリスクとコストを大幅に削減できること、FX CMSを経由すればSWIFT会員でなくてもCLS TPSPやカストディアンに対し取引通知・指図(SWIFT MT304)の自動発信が可能であることを強調しました。

パネルディスカッションでは、デロイトトーマツコンサルティング伊藤氏をモデレーターに、会場から寄せられた質問に回答するインタラクティブな場が設けられました。取引銀行との関係への影響や、ランニングコスト、導入までの期間や工数といった具体的な質問が多く寄せられ、CLS導入に対しての関心の高さを伺わせるものでした。既存の業務プロセスやシステムを抜本的に変えることは容易ではないとしても、CLS導入が対コスト面で見合うかどうかは、参加者それぞれの今後の検討要因となるものではないでしょうか。

参加者の皆さまからは「CLS決済の仕組みがよく理解できた」「事業法人の導入事例から、CLSに取り組む意義がクリアになった」といったご感想や、「今回のような、グローバルで主流になっていながら日本では導入が進んでいないサービスについてもっと知りたい」といったご要望がありました。

ブルームバーグでは、今後もこのようなセミナーを随時企画開催して参りますのでどうぞ奮ってご参加ください。

CLS CLSとは、 Continuous Linked Settlement の略で、為替決済について、為替取引締結銀行ごとの相対決済ではなく、すべてCLS経由で決済することができる世界最大の多通貨決済システムです。 各国の中央銀行に開設したCLS銀行口座を通じ、現在71のセトルメントメンバー、2万5000のサードパーティとの間で1日平均5.5兆ドルにのぼる18通貨の同時決済が行われています。CLS決済はインターバンク取引ではほぼ標準的に採用されており、欧米では事業法人の間でも普及が始まっています。