全社をあげて「イノベーションの推進」に取り組む
住友生命特別勘定運用部様がMost Popular App賞受賞

2020年2月21日、丸の内ブルームバーグ東京オフィスにおいて保険会社様対象の「第2回BQuantハッカソン」が開催されました。各社が抱える資産運用の課題解決を目指して、ブルームバーグが開発した次世代定量分析プラットフォームのBQuantでアプリケーションを作成し、そのアイデアや開発力を競い合いました。

国内の保険会社7社11チーム28名対抗で行われた本イベントで、参加者全員の投票で選ぶMost Popular Appを受賞したのは、住友生命(特別勘定運用部)チームでした。

ファンドの資産運用にあたるポートフォリオマネージャーは、日々、資産配分の判断をしなければなりません。同チームは、そのサポートとなる3つのツールを開発しました。今回、特別にお時間をいただき、ハッカソン参加に至った動機や参加したことでどのような変化があったかお話をうかがいました。

第2回 BQuant ハッカソンイベントリポートはこちらから

──どのようなBQuantアプリを作成されましたか︖また、これはどのような課題を解決するためのものでしょうか︖

3つの機能を備えたアプリを作成しました。1つ目は、日本企業の決算分析ツール。TOPIXは2000銘柄を超える株式から構成されるため、エクセルで各銘柄、各期の決算データを個々に抽出しようとすると大きな負荷がかかります。それをBQuant上で1度に全銘柄のデータをリクエストすることによって、高速に取得できるようになりました。2つ目は、エクセルでは実装できなかったLasso回帰モデルをBQuantで実装しました。機械学習モデルの1つであるLasso回帰を使って、相関の高い変数を選定することができます。例えば、相関の期間や周期、説明変数、被説明変数を設定すると、「S&P株価指数と米2年債利回りは相関が高い」等の結果がグラフによって示されます。こういった情報は、ポートフォリオマネージャーが「この指標を使うためには、他にどの指標を参考にしたらいいのか」と考える時のサポートになるものです。3つ目は、Correlation Heatmap。着目している資産をカスタマイズして、時系列でヒートマップの変化を閲覧できるアプリです。自社が持つファンドが、今どの資産と相関が高いのかが可視化されています。

BQuantハッカソンに参加いただき、得られたものを教えてください

社外や社内の他部署のチームが作成したアプリから、それぞれがどのような課題に取り組んでいるのかを知り、 知見を広げることができました。また、Pythonを使って具体的に何ができるのかということを、詳しくない方にも分かりやすく伝えることができたのではないかと思います。

BQuantが特に有効と思える点、使い方を教えてください

ブルームバーグ社の持つ巨大なデータベースから直接データを取得でき、加工からビジュアル化まですべてBQuant内で完結できる点で非常に利便性が高いと感じます。業務効率化はもちろんのこと、Pythonの様々なライブラリを使用することで、分析手法のレベルアップ・資産運用の高度化を図ることが可能です。また、公開することでアプリを簡単に社内で連携することが出来るのも、BQuantの優れた点だと思います。

今回で3つのBQuantハッカソン参加・開催後、社内での意識変化は感じられましたか?

BQuantを使うと、プログラミングやシステム開発の特別なトレーニングを受けていなくても、直観的で使いやすいインタフェースを備えて、高度な分析ができるアプリをすぐに作ることができるようになります。これを我々自身が実感するとともに、ハッカソンに参加したマネジメント層にも、広く知ってもらうことができたことは、とても意義深いことでした。

特別インタビュー: 松本 巌 執行役常務「ここを乗り越えないと次は見えない、とにかくチャレンジしてみよう」

BQuantなどの新しいテクノロジーの活用を推進することに対して、社内ではどのような議論がありましたか? また松本常務にとってのハッカソンの魅力とはどのようなところにあるでしょうか?

松本常務(以下敬称略)当初は、BQuantで何ができるのかイメージもわかず、ブルームバーグ社から話を聴くまでは、このような利用の仕方があるとは知りませんでした。ブルームバーグ社のAIM、PORT+を導入することを決めた当初の目的はAIMを導入することでSTPを実現し業務を効率化すること、PORT+を導入することによりポートフォリオ分析機能を活用し資産運用の高度化を図ることで、BQuantを活用するという視点は、最初の構想にはありませんでした。その後、ブルームバーグ社からBQuantの講習を受け、初めてその有効性に気づいたというのが正直なところです。

ブルームバーグ社の展開する大量のデータとBquantを活用した新しいテクノロジーの融合による相乗効果を実感し、活用推進の方向へと大きく舵をきりました。ハッカソンの魅力は、資産運用に係わるビッグデータを、Python言語を使って自ら分析できるという有効性を体感でき、作ったアプリケーションの内容を互いに発表し合うことで、社員がモチベーションを高めてくれることだと思います。弊社では、ハッカソンを開催することで、一気にBQuantの活用機運が高まったと考えています。

資産運用の高度化をさらに推進するにあたり、松本常務のテクノロジー導入に関してのお考えをお聞かせください。そのなかでBQuantやハッカソンはどのように位置付けられていますでしょうか?

松本:デジタル化の大きな波は、保険ビジネスだけでなく、資産運用ビジネスにも影響を及ぼしています。低金利が続くなか、世界中の保険会社、銀行、資産運用会社にとって、投融資のリスクを適切に取って収益を上げることが、生き残りを左右する至上命題となっています。そのためには、より多くのデータをより速く、より高度に分析することが必要で、いずれの金融機関も最新の情報技術の活用に余念がありません。今や、資産運用にとって、データに基づいて、投資効果を振り返り、リスクを管理し、新たな投資手法を研究するためのITテクノロジーは、必須のスキルであると言っても過言ではありません。

BQuantは、まさにそうしたスキルを発揮するためのインフラであると認識しています。BQuantを使うことによって、ブルームバーグ社が持っている株価、為替、金利、企業財務、気候変動等の環境といった資産運用に係るデータを、Pythonを使って効率よく扱えるようになったのは、非常に価値あることだと思っています。もちろん、ブルームバーグ社から、PORT+のような高度なアプリケーションが最初から提供されていますが、分析したいすべての機能が用意されているわけではありません。ファンドマネージャーごとに、分析したい視点も異なります。自分の求める分析アプリケーションが見つからずに、新たに作ってもらうとしたら、多大なコストと、時間がかかります。 そのような時、情報システム部や外部のシステムベンダーに頼ることなく、分析したい機能を備えたアプリケーションを比較的簡単に自分たちで組むことができたら、これ程効率的なことはありません。その環境を提供してくれるのが、BQuantの最大の魅力であり、将来的には、AIの技術も応用できたらと思っています。

今回は社内でも資産運用に携わる多くの方にハッカソンにご参加いただきました。アプリの作成やイベント運営に多大なリソースを費やされたかと存じますが、会社でこのような決断をされる際、どのようなことを意識されていたのでしょうか?

松本:講習を受けるだけでなく、「アプリケーションを実際に作ってみて初めてスキルが身につく」ということはわかってはいるものの、今までプログラムを扱ったことの無い資産運用部門の人間が、1からプログラムを学び、日常の業務をこなしながら、ハッカソンに向けたアプリケーションの開発を行うことは、とても敷居が高いと感じていました。正直な話、「日常の業務をこなすだけでも大変なのに、それに加えてアプリケーションを作ることは厳しい」という意見もありました。ただ、「ここを乗り越えない限り次の展望は見えない。だから、とにかくチャレンジしてみよう」と皆をその気にさせました。 いったん「やる」と決まってからは、参加チームメンバーは、「アプリケーション作成」という共通の目標に向かって邁進してくれました。ハッカソンで発表するために、どのようなアプリケーションを作るか、各チームがアイデアを出し合い、活発に議論が交わされました。アイデアは次々と沸き上がり、斬新な発想のアプリケーションが生まれました。そして、ハッカソンで発表するアプリで終わらずに、すでに、次に向けた新たな発想のアプリケーション構築に向けて動き出しています。こうした動きが自然発生的に、資産運用部門に生まれるようになれば、弊社の資産運用力は高度化していくと確信しています。

こうしたイノベーションを生み出す原動力は非常に重要です。そしてBQuantがその原動力になってくれるのであれば、活用しない手はありません。もちろん、各チームでのアプリケーションの作成や発表のための打ち合わせ、イベント運営のための準備等、ハッカソン実現に向けた労力は相当なものがありましたが、IT活用の高度化という、それ以上の効果を生みだしていることも事実です。弊社ではハッカソンイベントを今後も継続し、資産運用部門に生まれたIT活用の機運を引続き盛り上げていく予定です。今後ともブルームバーグ社には、BQuant講習など、サポートをいただければ大変助かります。よろしくお願いいたします。

──資産運用力の高度化への取り組みにおいて今後の  展望をお聞かせください

松本︓社内におけるノウハウ を共有化して、BQuantをアプリ構築のインフラとして 誰でも 当たり前に使えるようにしていきたいと思っています。そのためには、  さらなるスキルのレベルアップを図るとともに、新たに資産運用部門に入ってくる人にもPythonも含めたBQuantの活用方法を習得させる必要があると考えています。

──ありがとうございました。

松本 巌 執行役常務 略歴
資金債券運用部長、運用企画部長、執行役員兼運用企画部長、上席執行役員兼運用企画部長を歴任後、2018年7月より執行役常務

住友生命は、個人保険、団体保険など各種生命保険契約の販売と顧客サービスおよび財務貸付、有価証券投資、不動産投資などの資産運用を主要な事業としています。また、生命保険商品の提供に加え、あらゆるリスクに備える総合生活保障の観点から、損害保険会社の代理店として自動車保険・火災保険等の損害保険商品の提供にも取り組んでいます。さらに、住友生命グループとして国内外に幅広く保険事業を展開しており、子会社・関連会社等とのシナジーの発揮を通じて、事業の拡大・多様化を図っております。