日本取引所の女性役員比率は世界的低水準、男女平等巡る課題鮮明に

本稿はWinnie Hsuが執筆し、ブルームバーグ ターミナルに最初に掲載されました。(2023年9月11日)

日本取引所グループ(JPX)の女性役員比率は、他国の取引所や自社の上場規則目標を大きく下回っており、企業トップにおける男女平等を巡って日本が困難な状況に陥っている実態を浮き彫りにしている。

世界3位の株式市場を管理するJPXの女性役員比率は13%で、世界の取引所の平均の半分以下だ。ブルームバーグがまとめたデータによれば、主要26取引所の中でも低水準となっている。日本より低いのはチリ、インド、アルゼンチンだけだ。

この数字は、東京証券取引所が7月下旬に発表した、2030年までに役員に占める女性の割合を30%にするという改正上場規則の目標も下回っている。政府は今年初め、東証プライム市場指数を構成する企業に対し、30%の達成を迫る計画を明らかにした。。

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JPXの山道裕己最高経営責任者(CEO)は先月のブルームバーグとのインタビューで、「われわれは上場企業のロールモデルにならなければならないため、30年の期限よりも、かなり前に目標を達成するよう努力する」と語った。

取締役会の多様性の欠如は証券取引所固有の問題ではなく、全ての日本企業に共通する問題であり、真剣に取り組む必要があると山道氏は話す。

日本経済新聞が先月報じたところによると、プライム市場の企業のうち、この基準に達しているのはわずか3.7%。JPXの取締役会は現在、16人の取締役のうち2人が女性だ。株価は今年に入って37%上昇し、TOPIXの25%上昇を上回っている。

改善の余地

「上場企業に女性取締役を増やすよう働き掛けても、上場企業にはそれほど多くの女性はいない」。ガバナンス強化を提唱し、取締役会に対してコンサルティングを提供する会社役員育成機構の市川佐知子理事はそう指摘。「透明性は重要な問題だ。良いデータがないし、JPXのようなケースについてはあまり知られていない」と語る。

外国人投資家は、東証のコーポレートガバナンス(企業統治)改革が今年の日本の株価上昇の主要な原動力の一つであると評価しているが、山道氏はブルームバーグに対し、改善の余地はまだまだあると説明。取締役の多様性促進については「期待されたほど」進展しておらず、数値目標以上に注力する必要があると述べた。

ノルウェーの1兆4000億ドル(約205兆円)規模の年金基金や世界最大の資産運用会社ブラックロック、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントなどの機関投資家も、女性役員がほとんど、あるいは全くいない日本企業に対して反対票を投じるルールを設定している。

とはいえ、30%という目標は日本企業にとって難題であり続けるかもしれないと市川氏は言う。優れたガバナンスの実践にはコストがかかり、有能な女性候補者も限られているため、まず大手で注目度の高い企業に焦点を当てた取り組みが行われ、その後、中小企業でより広範な試みが実施されるべきだと市川氏は話す。

「コーポレートガバナンスは無料ではない」とし、「プライム市場には企業が多過ぎるし、中小企業もたくさんあるので、現実的ではないと思う」と述べた。

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