セルサイドのプライシングモデルにおけるデジタル革命

Read the English version published on April 27, 2023.

セルサイドの企業の最も重要な役割は価格発見と流動性供給ですが、デジタル化によって、従来とは異なる強力な方法でこれらの役割を果たすことが可能になります。

人工知能(AI)をはじめ、データを活用したテクノロジーは、トレーダーが顧客に対して可能な限り適正な価格を、可能な限り迅速に提示するためのツールとなるプライシングモデルを構築するのに役立ちます。

日本語ブログ記事をメールでお届け
ニュースレターご購読はこちらから

そうしたテクノロジーを利用すれば、取引の結果をモニタリングし、取引のライフサイクル情報をモデルにフィードバックして、将来の案件に生かすことができます。また、セルサイドのトレーダーが流動性の低い商品の取引を活性化することや、債券市場で依然として主流となっている電話などのボイス取引をスピード化を図ることもできます。さらに、極めて難しいRFQ(気配提示依頼)にも応えられるため、取引ワークフローを自動化するのにも役立ちます。

価格発見

バイサイドの顧客に提示する適正価格を設定することは、特に債券の場合、困難です。債券は店頭取引で売買され、価格情報が取引所で一元管理されるわけではないため、バイサイドに提示する適正価格を見極めるのが難しいのです。従って、価格は当該資産の直近の取引から判断するか、類似の債券から推測することになります。

それによって問題がさらに複雑になるのは、定期的に売買される債券が少ないためです。顧客から最近の取引がない債券の価格提示を求められた場合、トレーダーはそれに最も近い債券の直近の売買記録を見つけなければなりません。世界で毎日、何百万回もの取引が行われる中、こうした作業を一貫して正確に行うことは人間には不可能です。

しかし、AIなら可能です。AIが優れているのは、膨大な量のデータを解析し、トレンドを把握し、さらにはデータ間の関係性を見抜き、そこから実用的な知見を得ることができるところです。AIに投入して分析できるデータには、資産の取引価格もあります。

クラウドベースのAIプラットフォームは、数十万件の取引履歴から、探しているものに最も近く、直近の取引のある資産を数秒で特定するだけの演算能力とスケールメリットを併せ持ちます。

より正確なプライシング

この検索の精度は、広範なパラメーターを使用して、提案されたトレードと過去の取引との相関関係をより多く特定するAIの能力によって高められています。従来はトレーダーが、価格提示を求められた銘柄の数少ない単純な特徴に基づいて類似銘柄を絞り込んでいました。AIは、より幅広い属性に基づいて多くの相関関係を見いだすことができるため、最も正確に適合する資産をトレーダーに示すことが可能です。

AIとデータを活用した分析がプライシングにもたらすメリットは、流動性の低い市場で最も顕著に表れます。定期的な取引が極めて少ないと、RFQで提示した価格で売買できないことはよくあり、価格の提示すらできないこともあります。これは、迅速に価格を提示するリソースや能力がトレーダーにないためです。取引をまとめるまでの時間は非常に短く、適正かつ信頼できる価格を素早く提示できなければ、その時間は突然終わってしまうこともあります。

しかし、そのような事態に悩まされる必要はもうありません。AI分析により数秒で気配値を出すことができるため、取引の極めて薄い資産でも確実にマッチングさせ、市場の隅々にまで流動性をもたらすことが可能です。

全体像を把握

直近の取引は、その債券の次回の取引価格を大きく左右しますが、価格に影響を及ぼすのはそれだけではありません。無形の要因も重要な役割を果たします。その一つに、発行体の信用力がどのように認識されているかがあります。信用格付けがトレーダーの指針になりますが、テクノロジーを利用すれば、代替データを通じてさらに詳細な分析を行うことができます。

自然言語処理はAIの機能の一つで、テキストや音声ファイル、ソーシャルメディアの投稿などからデータを取得するものです。この機能は、資産や発行体がどのように評価されているのかを示すシグナルを発見するのに次第に使われるようになっています。そうしたシグナルは、特にネガティブなものの場合、資産の価格に影響を及ぼすことがあります。こうした情報をプライシングモデルに投入すれば、最終的に顧客に提示する価格を精緻化することができます。

デジタル化は電子取引にのみ役立つと考えがちです。しかし自動化がもたらす迅速なデータ処理は、ボイストレーダーにも有益です。まず、画面に価格が早く表示されるという利点があります。それだけでなく、AIによる気配値は過去の最終的な取引価格をかなり正確に予想していることが分かるので、ディーラーは、相手に強く信頼してもらえるという自信を持って価格を提示することができます。

同様に、AIによって適正に評価された価格は、トレーダーがさまざまな階層の顧客に提示するために価格を微調整する上で、より正確な基準になります。バイサイドの顧客としては、トレーダーの提示する価格がデータサイエンスに基づいていると分かれば、価格の質に対する信頼感が増すため、最終的に取引が成立する可能性が高まります。

付加価値の向上

セルサイドが成功を収めるのは、バイサイドが必要とする資産とサービスをシームレスに提供できるときです。自動化によって、そのためのベストプラクティスが書き換えられようとしています。特に、セルサイドのあらゆる業務の中心であるプライシングについては、その傾向が顕著です。

データを活用した総合的な分析でプライシングモデルを強化することにより、ディーラーは顧客に最高のサービスを提供できると同時に、ビジネスの付加価値を高めることができます。

本稿は、ブルームバーグのリアルタイムプライシング向けプロダクト部門ヘッドのRobert Simekと、ETOMSプロダクト部門ヘッドのDan Tsouが執筆しました。

本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。

デモ申し込み