年金需要とミレニアル世代がサステナブル投資の成長を促進

ブルームバーグ・インテリジェンス 2018年8月8日

本稿は、ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリストShaheen Contractorが担当し、ブルームバーグターミナルで最初に配信されました。

年金基金の長期投資期間にわたる需要に加えて、ミレニアル世代の関心を呼び寄せるという資産運用会社の目的が、サステナブル投資の成長を牽引している。需要の増加にあわせ、2017年には環境、社会、ガバナンス(ESG)投資の運用資産が37%増加した。日本の年金積立金管理運用独立行政法人(が、次のESG投資の成長を後押しすると期待される。


サステナブル投資、運用資産では欧州がトップ、日本でも拡大

サステナブル投資、責任投資、または倫理的投資など、様々な呼び方があるが、Global Sustainable Investment Allianceによれば、この分野の投資の運用資産が世界の運用資産全体に占める割合は26%である(金額にすると約23兆ドル)。国や地域別に見ると、欧州がサステナビリティ基準を踏まえた運用資産の半分近くを占めており、(方法が変更された影響もあって)伸び悩んでいるものの、市場を先導している。カナダと米国では引き続きサステナブル投資への関心が高まっている一方、日本でも政府によるコーポレート・ガバナンスや年金基金への取り組みが急増している。

 

楽観的な見通しがESG投資運用資産をさらに押し上げ

ESG投資の運用資産とESGファンドは2015年以降一段と伸びていて、ESG戦略需要の増加を示唆している。運用資産の増加ペースは加速していて、2017年には37%増を記録し、MSCIワールド・インデックスのリターンである23%を上回った。同様に、ETF(上場投資信託)の本数増加が原動力になって、2017年に設定されたファンド数は2014年の2倍になった。運用資産は増加して4,450億ドルを超えたものの、今でもESG投資はニッチな市場に限定されていて、ブルームバーグが定義した11のスマート・ベータ・ファンドのカテゴリーのうち、米国のESG型ETFの運用資産は最も少ない部類に入る。

サステナブル投資家がサステナブルな企業を育成

サステナブル投資の需要とサステナビリティを重視する企業の姿勢は密接に関係している。欧州の投資家はESG上の問題を考慮する可能性が高く、サステナビリティ・データの報告とランキングでは、平均すると欧州企業のスコアが最も高いことからも、それは明白である。多額の資産を保有し、投資期間が長期にわたり、頻繁に国の支援を受けている欧州の年金基金が、サステナブル投資市場では主要な勢力になっている。米国や日本でのサステナブル投資への関心の高まりが、これらの市場における企業によるエンゲージメントの改善を促す可能性もあろう。


ミレニアル世代、女性がサステナビリティ投資上の価値観の一致を先導

ミレニアル世代と女性が明白な関心を抱いていることを考慮すると、この二つの投資家層の影響力が拡大すれば、企業のサステナビリティ面のパフォーマンスが一層重視される可能性があろう。調査対象の集団の中で、社会的インパクト投資への関心と保有率は、ミレニアル世代が77%と最も高い。全体的な割合は低下したものの、37%は関心を貫いて投資を実行していて、2年前の28%よりも増えている。富裕層の投資家を対象にU.S. Trustが実施した調査に基づくと、ベビー・ブーム世代の投資家と男性投資家の約35%も同じような考え方をしていた。ミレニアル世代も、親世代と同様に、年齢とともにそうした感情を抱かなくなるかもしれない。他方、ESG面のパフォーマンスが業界内でトップの企業は、サステナビリティを重視する投資家の関心を益々引く可能性があろう。

 

ESG投資の普及度が低いため、市場は大きく開かれている

市場がかなり細分化されており、お決まりの資産運用会社が支配するような構造ではないため、新規の競合企業にとってはESG投資運用資産の獲得がチャンスになっている。通常は他市場を支配しているBlackRockやVanguardでさえ、ESG投資運用資産のシェアは合計しても2.5%にすぎないことから、他の資産運用会社にも大きく開かれた市場ということが示唆される。ESG戦略を採り入れた運用資産におけるシェアは、Credit Agricoleと子会社のAmundiが計11%でトップを走っており、それに次ぐのがParnassus Investments、DNB、KLP、BNP Paribasで、シェアは4~6%である。

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