パンデミックでLIBORフォールバックのコストが上昇する可能性

Read the English version published on May 15, 2020

本稿はJeremy Wilsonが執筆し、ブルームバーグターミナルに最初に掲載されました。

背景

640兆ドル規模のデリバティブ市場は、世界で最も重要な金利ベンチマークの1 つ、LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)からの移行を進めていますが、新型コロナウイルス流行によるロックダウンの影響で移行コストの増加に直面する可能性があります。

ドルLIBORは世界中で数兆ドルに上る金融商品のベンチマークとして使用されていますが、2021年末には廃止が予定されており、LIBORを参照金利として商品の金利を払っている金融機関は指定されたRFR(リスク・フリー・レート)への切り替えを迫られます。LIBORとRFRのスプレッドは新型コロナウイルスの経済的影響により拡大しています。

LIBORの標準ベンチマークとしての地位は過去数十年も続いてきたことから、現在もLIBORを参照する商品がデリバティブ市場の大半を占めています。これら契約の多くでは、LIBOR廃止に伴い、参照金利を国際スワップ・デリバティブ協会(ISDA)が指定する調整後RFRへ切り替える可能性(フォールバック)があります。

問題点

米ドルLIBOR対FFレート、LIBOR対SOFR、そしてカナダ・ドルのスプレッドも、3月下旬から4月上旬にかけて急拡大しました。その後スプレッドは100ベーシスポイントほど縮小して今では40ベーシスポイントほどで落ち着いています。その他の通貨も、それほど顕著ではないものの、似たような傾向を示しています。

LIBORとOIS(オーバーナイト・インデックス・スワップ)金利のスプレッド拡大(LIBOR対SOFRスプレッドも同様)は、FRB(連邦準備制度理事会)や他国の中央銀行が導入した金融緩和政策はLIBORベースの借り手にとって当初はメリットがなかったことを示しています。ただし、3カ月物LIBORは4月初旬より低下し、スプレッドが縮小しました。

ISDAのフォールバック算出に適用されるスプレッドはブルームバーグが発表する予定で、現在テストデータがISDA<GO>より取得できます。ブルームバーグはISDAにより選定された、指標となるRFRの調整ベンダーです。

デリバティブ・トレーダーは、スプレッドの縮小が続くとみているようです。ブルームバーグのISDAテストデータが開始して以来この2年間、米ドルの5年スプレッド中央値は上昇基調が続いており、今では25ベーシスポイントとなっています。スプレッドが今回のパンデミック(世界的大流行)以前に見られた取引レンジ上限付近にとどまると仮定すると、中央値は2021年末まで、そして2022年に入っても上昇が続くと思われます。来年が近づくにつれ、LIBORを利用する金融機関にとってこの点が重要な注意点となっています。

ブルームバーグターミナルの機能では、LIBORを参照する商品のLIBORからの切り替え状況をモニターでき、スプレッド拡大が続いた場合のポートフォリオ・コスト増の予測にも役立ちます。

トラッキング

ブルームバーグターミナルを使用して、ここ数週間におけるRFRとLIBOR間のスプレッド推移をご確認ください。

スプレッドは4月初旬に急拡大した後縮小しましたが、まだやや拡大した状態が続いています。

ここで示すスプレッドはLIBORとスポット3カ月物OISスワップ間のスプレッドで、ISDA算出のスプレッドとは異なるのでご注意ください。ISDAのフォールバック算出に実際に適用されるスプレッドはブルームバーグが発表する予定で、現在テストデータがISDA<GO>より取得できます。ブルームバーグはISDAにより選定された、指標となるRFRの調整ベンダーです。

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