EU離脱後のロンドン、金融センターとしての地位はどうなる

この記事はSilla BrushとAlexander Weberが執筆し、ブルームバーグターミナルに最初に掲載されました。

世界屈指の金融センターであるシティは英国の欧州連合(EU)離脱を乗り越え、生き残ることができるのか?銀行は最悪の事態も念頭に置きつつ準備を進めており、現在EUとの取引で享受している自由の多くは失われるだろう、と覚悟を決めているようだ。しかし、EU離脱が実際どの程度銀行業務に影響を及ぼすのか、という点については、政治的交渉の行方や、金融機関と監督機関の間のプライベートな対話に大きく左右されることになる。影響度が比較的小さなものから大きな打撃が想定されるものまで以下、火種となっている5つの争点を考察する。

規制の同等性評価

EUは、英国側が提案した規制面での相互承認の計画を拒否した。実現すれば、ロンドンに拠点を構えグローバルにビジネスを展開する銀行が、大きな混乱なく継続してEU全域でのサービス提供を可能にするものだった。EU側は、規制上の「同等性」、つまり、欧州委員会(EC)が一方的に英国側の規制と監督基準がEUと同水準だと認めた場合のみ受け入れが可能、としている。ブリュッセルの当局者は、同等性に関する規則の書き直しを始めており、これは英国の規制がEUの枠組みからかけ離れたものにならないようにとする、当局の厳格な姿勢を表している。一方金融街シティにとっては、同等性評価には重大な不利益がある。多くの規制にまたがっており、預金と融資を別にすれば、金融業界の一部にしか門戸を開かないものだからである。しかも、これは一方的な承認であり、EUは短い通知期間で撤回することができることから、銀行にとってあまり安心感を与えるものではない。

国境をまたぐ取引

経営コンサルタントのOliver Wymanによる2017年の報告書によると、新たな欧州拠点を構えるために、銀行は500億ドルの追加資金が必要になる可能性があり、さもなければ単一市場への特権的アクセスを失うことになる、という。しかし、銀行が望むように貸し手がいわゆるバック・トゥー・バックトレードを利用して、EUに拠点を置く事業体からロンドンにビジネスを戻すことをEU規制当局が認めるのであれば、そのコストは大幅に下がることになる。このような取引は、一つの銀行の法人間でデリバティブ(金融派生商品)および有価証券取引を移動させ、グローバルまたは地域レベルでのハブにビジネスを統合し、結果的にリスクを集中管理することを可能にするもので、必要な資本がより少なくてすむことになる。EUブロック全体の基準を調整する欧州銀行監督局(EBA)は、当該取引はEU離脱後も引き続き認可されるということを明確にしている。しかし、欧州中央銀行(ECB)の監督当局は、十分な管理能力がない「抜け殻」のような事業所は容認できない、と警告する。資本と従業員数はいったいどれほど必要なのか、当局がブロックに求めるレベルの最終決定までには、まだ道のりは遠い。

クリアリング(清算・決済)拠点をどこに置くか

現在ユーロ建てデリバティブの清算は、ほぼロンドンに集中しており、シティはこの非常に重要なビジネスでの圧倒的な清算シェアを守ろうと必死だ。しかし、クリアリングハウスはユーロ圏にあるべきだとするフランスとドイツの主張により、この問題は2016年の英国のEU離脱をめぐる投票後の最初の論点の1つとして浮上した。金融業界は、事業がロンドンとユーロ圏に分割された場合の高コストを避けるため、EUと英国の規制当局がクリアリングハウスの監督において協力してあたるよう求めている。また、一部のドイツの規制当局者は、追加コストの面から、クリアリングハウスの強制移転には消極的だ。ブリュッセルの欧州議会議員は、移転は共同で監督することが極めて困難という結論に達した場合の最後の手段だと主張する。この問題に関して、EUが最終方針を決定するまでにはこの先何ヶ月もかかると見られている。

委任規則

昨年、欧州証券市場監督局(ESMA)が、ライセンスを保持するためにEUに常駐が必要な管理職数の概要を提示し、在英の資産運用会社を驚かせた。このような委任規則は、販売拠点を公式にはEUに構えながら、管理はニューヨークや香港などで行うことが可能ないわゆるUCITSファンドにとって特に重要な意味を持つ。規制当局は、letterbox entities(郵便受けまがいの拠点)を存続させないようにする、としてきたが、業界は、この動きについて、EUが英国からビジネスを奪おうとしていると見ている。さらにブリュッセルで協議中の法案は、企業が非EU加盟国に「リスクを委託、委譲、または移転する」際には、パリを本拠地とするESMAにより大きな介入権限を与えるというものだ。法案が通れば、ロンドンからの上級管理職移転が大規模なものなりかねないとして、アセット・マネジャー達は、これ以上厳格な体制を避けるためのロビー活動に必死だ。

金融契約とデータフロー

規制当局が何らかの措置をとらなければ、英国とEU企業間の長期にわたる金融契約は離脱によって混乱を引き起こす可能性がある。イングランド銀行の試算によれば、この問題で、26兆ポンドのデリバティブ契約と3,600万人の保険契約者が影響を受ける可能性がある、と言う。英国当局はこの問題を認識し対処しようとしているが、EU側は、各企業がそれぞれ独自の準備を進め、必要であれば契約を改訂するよう要請している。EU側のこの方針は、英国から大陸へのビジネス移行を加速させる可能性がある。英国金融行動監視機構(FCA)のヘッドであるAndrew BaileyもEUと英国間での大量のデータフローを確実に継続するためにも、規制当局による「緩和に向けた行動」を求める、としている。