日本の個人投資家が目を付けているのはインド-果敢な利回り追求

本記事はYumi Tesoが執筆し、ブルームバーグ・ターミナルーに初出掲載されたものです。

日本の個人投資家は世界で最も果敢な利回りハンターだが、今、目を付けているのはインド資産だ。ルピーの為替相場が安定していることと債券利回りがアジアで最高水準にあることが魅力と映る。

三井住友アセットマネジメントがコタック・マヒンドラ・アセット・マネジメントと共同で運用するインド債券ファンドには昨年12月-今年6月に240億円が純流入した。同社データによれば運用資産総額は7月10日時点で約870億円。

三井住友の外部委託運用グループの加藤啓之シニアファンドマネジャーは、日本のリテール投資家の間で「高利回りの商品が求められている環境にある」との見方を示した上で、「高金利で通貨が安定」しているとしたら素晴らしいことで、「それを支える要素がインドについてはたくさんある」と指摘した。

投資信託協会のデータによれば、日本の投信によるインド証券の保有高は6月に8980億円と前年同期から2倍超に増えた。ルピーは過去6カ月にドルに対して6.1%上昇し、アジア通貨の中で上昇率トップ。10年物インド国債の利回りは6.45%で、アジア主要国でインドネシアに次ぐ高水準。日本は0.07%だ。
加藤氏は14日に東京でインタビューに応じた。インタビューでのQ&Aは以下の通り。

なぜ今インドが人気なのでしょう?

• なぜインド債券が買われているかというとファンダメンタルズが改善してきている。財政が健全化して赤字が縮小、今後もさらに赤字が縮小するという計画は現実的と受け止められていて、財政の健全化が今後も進む見通しである。対外収支も改善してきており、対GDP比で経常赤字がかなり少なくなってきており、海外からの直接投資のプラスで赤字分をファイナンスできている状態が続き、ルピーの相場にもポジティブになっている。
• インフレがかなり抑制されていて、インド準備銀行も、総裁が変わった後もインフレをしっかり抑制させていくスタンスということで信頼が生まれている。
• ポジティブなニュースが続いている。たとえば、州議会議員選挙で与党が大勝して、モディ政権の信任が厚くなった、物品サービス税(GST)が導入されたが、大きな波乱はまずないし、高額紙幣の廃止については経済への影響も当初想定されていたより小さかった。

インドと他の諸国との違いは何ですか?

• 先進国の株は割高感があり、下落の懸念がある。先進国の債券については、各国の中央銀行が引き締めに向かおうとしているので金利上昇が進むというリスクがある。
• インドはディフェンシブな性質が強い。輸出依存度が低いところがあり、世界経済が悪化しても自国の消費がしっかりしていればあまり大きな影響を受けない。
• 中国への貿易の依存度が低いし中国と輸出で競合する場面も少ない。このため対外的ショックに強い。
• インドは原油の純輸入国なので、原油価格下落が貿易赤字縮小とインフレ抑制に働く。また、国債の外国人保有比率が他の国に比べて低いため、新興国市場から資金が逃避する場合も大きな影響を受けにくい。

インド準備銀行の政策の債券への影響は?

• 利下げがあったとしても、ここから大きく金利が下がるとはみていない。10年国債で6%台を恐らく維持するだろう。ルピーも安定するとみている。実質金利も引き続き高いので外国人にとって非常に魅力的な状況ではないか。

インド債券ファンドの現在の保有内容は?

• ファンドの中ではルピー建ての方を選好していて全体の7割ぐらい。米ドル建てについては米国が利上げを進めている過程なので、金利上昇のリスクあるということを警戒して30%ぐらいにしている。
• 米ドル建ては米金利上昇局面で長期金利が上昇するかもしれないのでデュレーションは短めになっていて3年台ぐらい。ルピー建て債券については長めで現在は6年から6.5年ぐらいという感じである。中期的にはインフレの安定などを背景に利回りが低下していくことも十分想定できキャピタルゲインを取れる可能性もあるためだ。

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