データを活用してジェンダーバイアスに取り組む

Read the English version published on March 8, 2022.

今年の国際女性デーは「#BreaktheBias」をテーマに、男女平等の世界を作るために何ができるかに全体の焦点が当てられています。男女平等な世界とは、多様性があるだけでなく公正かつインクルーシブであることを意味します。「#BreaktheBias」を実現するには、日々の決断を妨げている内なる偏見を真摯に見つめることが必要でしょう。

新型コロナウイルスのパンデミック、社会変革を継続的に求める動き、そしてESG資産への大規模な資金流入が世界を取り巻く中、社会データとそれがもたらし得る変化には透明性や進歩が明確に求められています。

アクセンチュアのEllyn Shook氏の言葉を引用すると、企業のリーダー達の間には「男女平等への道のりは複雑で、永続的な進歩を遂げることは困難であるものの、真のリスクとは何もしないことという認識が広がりつつある」のです。

データが議論を活発化させる

男女平等の実現に向けた第一歩はデータの活用です。当社では、ブルームバーグ男女平等指数(GEI)のレンズを通して企業が男女平等への取り組みに必要なGEIデータを集め、議論を促すための枠組みを提供することを目指しています。

世界45カ国・地域の550社以上がブルームバーグ・ジェンダー報告フレームワークを利用して2020年度のジェンダーデータを報告しています。こうした企業は、データの透明性を通じて説明責任を向上させています。情報開示とデータパフォーマンスを5つの主要な柱にわたり包括的にスコアリングすることで、企業は改善点の把握や同業他社との比較ができます。こうして、通常では困難と思われるバイアスに関する議論を自信を持って始めることができます。

バイアスへの取り組み

今年の国際女性デーのテーマ「#breakthebias」は、私たち全員が職場でバイアスにどう取り組んでいるかを振り返ることを呼びかけています。GEIの主要テーマの1つとして、企業が職場での露骨な差別行為に加え、無意識のバイアスにどのように取り組んでいるかの両方を評価します。例えば自己認識キャンペーン、無意識バイアス研修、従業員リソースグループなどは、矛盾に対処し、より公平な慣行を促進するために取られているさまざまなステップのほんの一部に過ぎません。

しかし、従業員の積極的な関与は年に1度のアンケート調査を実施するよりもはるかに有意義です。常に留意すべき点は、数字の背景には生きた人間がいるということです。提供されるデータがなければ、格差を特定し、それに対処することはとりわけ困難でしょう。

調査によると、従業員がエンゲージメント調査や自己認識調査に回答しない主な理由として、「差別への恐れ」と「調査結果を受けても企業は何もしてくれないという信頼感の欠如」の2点が挙げられています。

以上の2点に取り組むための最初のステップとして、データを活用することができます。

差別への恐れ

職場の差別については多くの誤解があり、その代表的な例は、差別はあからさまに不当な扱いとしてのみ現れるというものです。実際には、差別は無数の形で表現され、マイクロアグレッション(偏見に基づく日常の言動)や無意識バイアスでさえ含まれます。差別は非常に複雑であることから、GEIの測定手法は常に進化を遂げてきました。毎年データセットを拡大し、実際にポジティブな変化をもたらす指標間の相関の深化を目指してきました。

当社が特に注視している分野は無意識のバイアス、すなわち、あからさまな差別行為のみならず無自覚の言動です。こうした特有な問題に対処する場合、果たして研修やその他の手段は有効か、という疑問が浮上します。

最近の研究では、義務的な必須の研修は当初の想定ほど効果的でない可能性が示されています。実際、必須の研修の場合、参加者の多くは結論として女性や少数派(マイノリティー)の周りでは言動に細心の注意を払うことが重要だと解釈していました。すなわち、慎重に言葉を選び相手を不快にさせないことが重視され、個々人が真にインクルーシブな職場で活躍・貢献するために必要な配慮を理解するという当初の目的が達成されていませんでした。

以上を受け、当社では毎年フレームワークを改良し、企業が進化する職場のニーズに対応しているかを随時確認しています。2023年のGEIフレームワークを検討するにあたっては、企業には自主的な研修の有無、そして自主的に研修を受講した従業員の割合を明示するよう求めています。従業員が自主的に研修を受講しているかを評価することで、各社員が学びに対し心から関心を寄せているかのインサイトが得られるなど、企業固有の文化について多くのことが分かります。

これは、企業も参加して従業員同士による誠実な議論を促す機会を示す良い例です。公平性に関する議論は、「自分の属すグループと他のグループ」というグループの分断化を生む可能性があります。こうしたことを念頭に置きながら研修やその後の議論に臨み、すべての人の声が反映されるようにすることは従業員全員が果たすべき責任です。

結果的に企業が何もしてくれないという信頼感の欠如

企業が正しいことを行い、研修や従業員調査などの対応策を講じている場合でも、従業員は有意義な変化を感じられない理由とは何でしょうか。重要なのは、こうした手段の提供だけでなく結果を効果的に評価し、インクルーシブな職場環境を促進するために活用することです。

主要な調査結果をジェンダー別に評価し、課題を克服するための合理的な目標を公表することで、企業は進捗についての説明責任を果たすという課題を克服できるのです。また、従業員に対してもただの表面的な作業ではなく、それぞれの意見を実際に重視している姿勢を示すことができます。

GEIの5本の柱全般において説明責任は極めて重要です。GEI構成企業の83%はグローバル従業員エンゲージメント調査を実施しており、85%は調査結果をジェンダーごとに評価しています。

また、管理職の人事考課における指標としてダイバーシティ&インクルージョン(D&I)目標を導入している企業がますます増えています。2022年GEI構成企業のうち、56%が導入済みで前年から15%増加しました。

GEI構成企業を分析した結果、管理職の人事考課におけるD&I目標の導入実績の有無と管理職に占める女性の割合には正の相関が認められました。これは、管理職にD&I目標達成の責任を課すという方針を導入することで、長期的に女性管理職が増加する可能性を示唆しています。

行動計画の公表も次のステップとして極めて重要です。例えば、定期的な評価を通じて企業が男女の賃金格差を解消するためにどのように取り組んでいるかを明示することは、給与支払いの慣行に抑制と均衡の原則を導入し、ジェンダーバイアスをなくすために追加的な措置を講じるという努力を後押しします。

調整前の平均男女間賃金格差が上位に位置する企業は、格差を解消するための行動計画を公開していませんでした。2022年GEIを構成し調整前平均賃金格差が40%以上だった企業のうち、賃金格差の解消に向けた具体的かつ期限付きの行動計画を公表している企業はありませんでした。突き詰めると、格差解消の計画を公表し自社に説明責任を課している企業こそ実際に男女間の格差を縮めつつあります。

継続的な説明責任

企業は正しい方向に進んでいる一方で、まだ実現すべきことがあります。男女平等達成への第一歩はデータを活用することです。効果的な変化を遂げるために測定できる事柄を把握することは、最初のステップにすぎません。さらにもう一歩前進し、データの透明性を確保することが非常に重要です。実現可能な目標やその結果を利害関係者と共有することで、企業の説明責任を果たすことができます。

バイアスをなくすには、まず職場での不公平に向き合う難しい議論を始める必要があります。データはこうした議論を始めるきっかけとなり、いつの日か議論が難しいものではなく、より平等な未来を促進する単なる手段になることが望まれています。

本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。

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