LIBOR移行で金融機関はスワップ市場から締め出しも:CFTC会長が警告

Read the English article published on November 30, 2020.

この記事はWilliam ShawとSilla Brushが執筆し、 ブルームバーグ・ターミナルに最初に掲載されました。

来年初め、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)からの移行を機に多くの運用会社が金利スワップ市場から締め出されるリスクがあり、それを避けるには各社は円滑なLIBOR移行を促す新たなプロトコルを採用する必要がある、と米商品先物取引委員会(CFTC)のHeath Tarbert会長が警告しました。
LIBORは2021年の年末より段階的に廃止される見通しですが、市場参加者はLIBOR廃止後、各契約の参照金利をLIBORから代替金利指標に切り替えるための標準的な文言を1月までに採用することが奨励されています。CTFCのTarbert会長は、銀行や証券会社をはじめとする金融機関のうち約400社がすでに新たなフレームワークを採用しているものの、およそ2400社の対応が遅れており、これにはLIBORにひも付けられたスワップのエクスポージャーを持つ数多くの資産運用会社も含まれる、と述べています。
スワップ取引は、金利リスクのヘッジ目的で企業や投資家に利用されるほか、値動きから利益を得るための投機目的でも利用されています。国際決済銀行(BIS)のデータによると、ドル建て金利スワップの想定元本残高は約110兆ドルに上ります。来年初めまでに新規プロトコルを採用せずLIBORリスクをヘッジできない市場参加者は、銀行や証券会社からスワップ契約締結を渋られる可能性が高いだろう、とTarbert 会長は述べています。

国際スワップデリバティブ協会(ISDA)が策定し、10月に発表されたこのプロトコルは、2021年末にLIBORが廃止された際の最悪シナリオを防ぐための重要な手段として推奨されています。

バークレイズ、クレディ・スイス、ゴールドマン・サックス、JPモルガン・チェースをはじめとする世界最大級の銀行の大半がすでに新規プロトコルを採用しています。

しかし、Tarbert会長は「双方の当事者がこのプロトコルを採用しない限り、スワップ契約の参照金利をLIBOR以外の金利に切り替えること(フォールバック)はできない」としています。

一部の金融機関が新規プロトコルの導入をためらっているのは、ドルLIBORの廃止時期が不透明であるためかもしれない、とFutures Firstのアナリスト、Rishi Mishra氏は述べています。先週、LIBORの発表・管理主体であるICEベンチマーク・アドミニストレーションと英金融行為規制機構(FCA)の発表を受けて、LIBOR廃止が先送りになるのではないかとの臆測が急速に広がりました。

米国でのLIBORからの移行を指導するために米連邦準備制度理事会(FRB)が設立した代替参照金利委員会(ARRC)は、各社に新プロトコルに準拠するよう呼びかけています。

モルガン・スタンレーのInstitutional Securities部門副会長でARRCの会長も務めるTom Wipf氏はメールでの声明で、「このISDAプロトコルは、市場参加者が独自に問題を解決できる分野の好例」とし、「デリバティブ契約の問題解決のために法令の整備を待つ必要はなく、このプロトコルに従えばどの金融機関も問題に対処できる」と述べています。

LIBORを管理する英国FCAは7月に、新プロトコルを採用しない企業は「大きなリスク」に直面すると警告しています。

ISDAプロトコルに従うことで金融機関は面倒な契約再交渉を回避できるものの、画一的な文言で各社個別の利益が最優先できるのかという懸念が残されています。

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