今後、ESG投資が金投資より優勢となる理由

See the English version published on September 15, 2020.

本稿はブルームバーグ インテリジェンスのESGアナリストであるAdeline Diabが執筆し、ブルームバーグターミナルに最初に掲載されました。

2020年のファンド投資の中心はESG関連株の上場投資信託(ESG ETF)と金でしたが、ここにきてESG ETFが優勢となるのが時間の問題となってきました。両投資戦略ともに市場の下落から運用資産をプロテクトする退避資産と見なされてきましたが、ESG投資はまだ成長段階にあるため今後の成長が見込めるのみならず、環境にやさしいグリーン景気刺激策や新型コロナウイルス感染症ワクチン開発実現の可能性の高まりが追い風になると考えられるからです。

さらにESG投資戦略の高度化と対象資産の広がり(株式からハイイールド社債や不動産へ)により、このまだ成長過程にあるアセットクラスの投資家層が大きく広がろうとしています。地域的に見てもこれまでは欧州が中心でしたが、今後はESG投資に目覚めつつある米国投資家からの資金流入が見込まれます。

金と同じく退避資産ではあるが、成長も見込めるESG

ESG ETFと金投資ファンドを直接比較することはできませんが、ESG ETFへの資金流入は金投資ファンドへの資金流入と性質が似てきています。すなわち、低ボラティリティ投資戦略の代替と見なす投資家が増えているのです。BIファクタースコアカードによれば、ESGは金と異なりダウンサイドプロテクションのほかに収益性、グロース、モメンタムなどのファクターへのエクスポージャーも提供するため、より息が長く着実な投資魅力を備えているといえます。

長期的には、ESG ETFが持つセクターとファクターへのエクスポージャーがパフォーマンスを下支えするでしょう。上昇相場においても、低ボラティリティファクターがもたらす潜在的なアンダーパフォーマンスがグロースファクターによって相殺され、ESGはその優位性を維持すると考えられます。

ワクチン開発への期待がESG投資の追い風に、金投資意欲は減退

現在のESG ETFのセクター構成はヘルスケアがオーバーウエートされていますが、コロナウイルスワクチン開発や景気回復への期待が高まる中で、このセクター構成が引き続きパフォーマンスに貢献するでしょう。BIストラテジーセクタースコアカードではヘルスケアがトップの地位を維持する一方で、医薬品セクターは予想EPSと2021年のP/Eレシオが過去の実績と比べて低い(ドル安と業界再編リスクなどによる)ことによりアンダーバリューされています。しかし、ブルームバーグのコンセンサス予想によれば、医薬品セクターは景気低迷を最初に脱するセクターと見られています。

上述の通り欧州のESG ETFのヘルスケアのオーバーウエートは継続的なアウトパフォームの要因の1つとなっていますが、ワクチン開発が進捗すればこのポジションがさらなる追い風になると思われます。半数近くの欧州系投資ファンドの保有銘柄トップ10には、ロシュ、グラクソ・スミスクライン、サノフィといったワクチン開発や治験競争からメリットを得られる可能性が高い銘柄が含まれています。

景気刺激策はESGに追い風、金には逆風

また、素材および資本財・サービスのオーバーウエートとエネルギーのアンダーウエートというESG ETFのポジションが、202010%を超えるトータルリターンを欧州でも米国でも生み出しています。両セクターともBIストラテジーセクタースコアカードで捕捉されており、景気回復をもたらす2つのトレンド、すなわち環境にやさしいグリーン景気刺激策と世界的な脱化石燃料の動きから恩恵を受けています。

素材セクターの見通しは、環境にやさしい建設やエネルギー、運輸に何十億ドルもの資金が投資されていることから明るいものとなっています。また、株価の出来高比率と収益モメンタムという2つのテクニカルシグナルも株価上昇サインを出しています。一方で、エネルギーセクターの見通しは引き続き暗いものとなっています。景気刺激策の内容は化石燃料依存率の引き下げを目指すものとなっており、石炭の次にESG投資から除外されるセクターは石油ではないかとの見方が広がっています。現状ではエネルギーセクターのバリュエーションは良好で株価上昇余地も残っていますが、長期的には下落傾向にあると考えられます。

他のスマートベータ戦略を抑えて、ESG ETFへの資金流入が世界的に拡大

ESG ETFは、全体の5%を占める欧州が依然として最大の市場となっています。これに対し米国のシェアは1%に届きませんが、最も急速に成長している市場です。米国におけるスマートベータETFへの資金流入は63%減少しましたが、ESG ETFへの資金流入は2019年対比で3倍に伸びています。欧州でもスマートベータへの資金流入は38%減少しましたが、ESG ETFへの資金流入は2020年初めから9月までで倍増しています。

このように米国でも欧州でも、ESG ETFは他のスマートベータ戦略を抑えて市場シェアを順調に伸ばしています。例えば米国では、2020年初めから9月までで、ESG ETFが全スマートベータETF戦略への資金流入の94%を占めました(2019年はわずか11%)。その総額は166億ドルに上り、バリュー、クオリティ、グロースなど他のすべてのスマートベータ戦略への資金流入合計額を上回りました。