アジア太平洋地域で広がるESG開示の動き

Read the English version published on November 9, 2021.

この記事は、ブルームバーグのESGデータスペシャリスト、髙松公彦が執筆しました。

ESG(環境・社会・ガバナンス)に関する基準は、過去10年間で、特にアジア太平洋地域を中心に世界各地の投資家の間で 注目を集めています。

この10年間で、アジア太平洋のすべての国と地域でESGデータの開示が増加しました。中でも香港の前進が最も目覚ましく、平均ESG開示スコアは2010年の17から20年には40と、アジア太平洋地域のその他の市場をリードしています。

アジア太平洋地域の規制環境はこの10年で劇的に変化を遂げており、今では大半の市場が「コンプライ・オア・エクスプレイン(順守せよ、さもなくば説明せよ)」の原則に基づいたガバナンス関連規約を導入しています。 中国など、ESG開示を義務付けている国もあります。

アジア太平洋地域におけるこうした勢いを受け、世界のESG資産は25年までに53兆ドルを超えるとブルームバーグ・インテリジェンス(BI)では推定していますが、これは140.5兆ドルと予想される運用資産全体の3分の1以上に相当します。

テーマと国によって大きく異なるESG投資

セクター別内訳では、どの国でもESG投資の内容にそれほど差はありませんが、環境・社会・ガバナンスの各テーマ別にすると顕著な傾向が見られます。例えば香港では、政策変更によりESG報告方針のESG開示が「任意」から「コンプライ・オア・エクスプレイン」ベースに格上げされた16年以降、環境データの開示が大幅に増えました。

ほとんどの国で開示が義務付けられているガバナンスデータとは異なり、環境・社会データの開示に向けた企業の取り組みは、企業の所在地における規制環境から影響を受けるようです。例えば、社会データの開示水準は国によって大きな差があり、日本は他のアジア太平洋諸国に後れを取っています。これは、自社の評判に悪影響を及ぼす機能性がある安全性関連データの開示を日本企業が渋る傾向にあるためかもしれません。

コマンドラインに「ESG」と入力し、「BI ESG-ブルームバーグ・インテリジェンス:環境・社会・ガバナンス分析」をオートコンプリートから選択。サイドバーの「データライブラリー」セクションで「BBGスコア」をクリック。クイック入力は「BI BESGG ESSCORE」。

アジアで進化を続けるESGガイドライン

大多数のアジア太平洋諸国はガバナンス関連の報告ガイドラインを導入していますが、特定のESGトピックに焦点を絞ったテーマ別ガイドラインを導入している国もあります。

中でも注目すべきは、近年中国市場でサステナブルボンドの発行が急増したことを受け、香港と中国が18年にグリーンファイナンスとグリーン債券に関する報告ガイドラインを導入したことです。中国は今年、前年比230.3%増となる605億米ドルのグリーンボンドを発行し、ESG債発行額で日本と韓国を抜いてアジア首位となりました。2021年5月には中国人民銀行(中央銀行)がグリーンレンディングのガイドラインを発表し、借り手に対して環境プロジェクトの資金調達を奨励しました。

一方で日本、香港、台湾は推奨開示項目に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)を取り入れています。

ESG投資は、特に中国で、パンデミック(世界的大流行)による不安定さの中でもその耐久性を立証しました。アジア太平洋など世界各地でグリーン投資需要が高まる中、投資家と政府は今まで以上に高度で透明性の高いESG基準と指標を求めるようになるでしょう。過去10年間の開示の動きは、今後のESGデータ増加と透明性向上の先触れといえるかもしれません。

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