新型コロナと技術革新をテーマに河野大臣とシーゲル氏が対談<ブルームバーグ・バーチャルラウンドテーブル>

Read the English version published on June 21, 2021.

ブルームバーグは、アジアの企業から57人の経営幹部を集め、新型コロナウイルスとテクノロジーが社会や経済に及ぼす影響について議論する、バーチャル・ラウンドテーブルを開催しました。講演者としてお招きしたのは、外務大臣(2017-2019年)および防衛大臣(2019-2020年)を歴任し、現在は行政改革大臣や内閣府特命担当大臣を務め、2021年1月18日からは日本における新型コロナウイルス感染症ワクチンのロジスティクスを統括している河野太郎氏と、世界を代表する金融データサイエンスの企業であるツーシグマ・インベストメンツの会長兼共同創業者であるデビッド・シーゲル氏です。

対談では、新型コロナウイルス感染症ワクチンが世界的に及ぼす影響、コロナ禍における生活とビジネスから学び得たこと、デジタルトランスフォーメーションや自動化が仕事と社会に及ぼす影響、そしてグローバル規模で進むこの壮大な変革における政府の役割について議論されました。

河野太郎大臣とツーシグマ・インベストメンツのデビッド・シーゲル氏が対談

新型コロナウイルスが明らかにした基本的な課題

新型コロナウイルス感染拡大とテクノロジーの進歩が重なって、この一年間で根本的な社会の変化が起こりましたが、それらが長期的に何を意味するのかは徐々にしか明らかになっていません。河野氏は、一国のワクチン担当のトップとしての見解を次のように述べています。「技術の進歩により新型コロナウイルス感染症のワクチンを極めて早く開発することができました。5年前、10年前には考えられなかったことです。しかし、コロナ禍における日本の法的枠組みは、平時のままで何も変わっていません」。同氏は、急速に拡大する問題への効果的な対応を妨げるシステムの例として、ワクチン開発を長々とした承認手続きという足かせで縛りつける規制を挙げ、最終的には一般市民に不利益をもたらすものであるとし、「私たちがより迅速に行動できるように、失敗を許容する文化を作り上げる必要がある」と述べました。

一方、シーゲル氏は、サプライチェーンの混乱ならびに世界中でワクチンを公平に入手できるようにする課題は、グローバル化の進展を妨げる恐れのあるナショナリズムの高まりに、明確な焦点が当たることになったと、自身の見解を述べました。さらに、「例えば、世界の半導体業界を見てみると、コロナ禍の影響で生産が滞り、重要なサプライチェーンの根本的な脆弱性が露呈しました。現在、自国の半導体サプライチェーンを守るべく、各国政府が目先のボトルネックを解消しながら、長期的な政策の策定を進めており、課題は山積しています」と述べつつも、同氏は、真摯に協力し合うことで、グローバリゼーションの未来は確かなものになるという楽観的な見解も示しました。

新型コロナウイルスが日本の日常へ与える試練

より革新的で生産性の高い日本社会を実現するために、今後活かせる新型コロナウイルス対策の経験について河野氏は、在宅勤務の利用は1980年代から存在していたものの、「日本企業は最終的な成果物に対する個人の貢献度を正確に測定することが難しい」と、自身の民間企業での経験をもとに見解を述べ、物理的にオフィスにいることと生産性を同一視するシステムができあがっていると指摘しました。さらに、「日本企業は新型コロナウイルスの影響で在宅勤務を経験したものの、今年になってオフィス勤務に戻る企業が多くなっています。しかし、欧米の世論調査を見ると、在宅勤務の生産性の方が高いと考える経営者が多いと思います」と述べました。他の国では博物館に追いやられてしまったファクシミリを、日本企業がいまだに使っているという事実が、日本の状況を「まさに物語っている」とし、リモートワークモデルを恒久的に採用し、労働力を東京などの都市部から分散させることにより、地域を活性化する効果が期待できると説明しました。

シーゲル氏がコロナ禍からの学びとして、テクノロジーによって毎日の通勤から解放されたり、家族や愛する人と過ごす時間が増えたりと、生活の質が向上する人が増える一方で、デジタルデバイド(情報格差)が拡大していることを見過ごしてはならないと指摘。同氏は、テクノロジーがもたらした仕事や生活の質の向上は、既に恵まれている人々を中心に恩恵をもたらしているため、足元で進行中のデジタルトランスフォーメーションが、より公平で公正な社会の実現をコミットすることに基盤を置いた仕組みを作ることが課題であると主張し、「将来はリモートワークの方向に進むと見られますが、問題は、大幅に取り残される人が存在しない公平な社会をいかに作り上げるかです」と述べました。

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デジタル化 – 私たちの生涯のトレンド

ツーシグマ・インベストメンツは、投資運用という伝統的な業界にデータサイエンスやAI等の高度な技術を活用した先駆者です。シーゲル氏は、お金、音楽、映画、金融データ、健康データ、芸術といった、世界のあらゆるものが変革される未来に向かっていると説明し、「人生の中で迎える大きなトレンドは、ありとあらゆるもののデジタル化です」と述べました。そしてデジタル化によって生み出される膨大な量のデータを考えると、さまざまなビジネス上の問題がデータサイエンスの問題となり、ビジネスの本質を変えていくことになるとし、「これは、新たな効率性と機会を世に放つものであり、驚くべきことです」と述べました。また同時に、シーゲル氏は、この変革があまりにも急速に進んでいるため、個人も企業も遅れないようついていく必要がある、と注意を促し、「私たちの生活のあらゆる側面に影響を与えている変革のスピードを過小評価してはいけません」と強調しました。

日本政府はイノベーションに重点を置いた政策を打ち出していますが、河野氏は、デジタルやデータを活用した公平な変革を促進する上で、政府が果たすべき重要な役割があると考えています。「長い目で見れば、デジタル社会やデジタル技術は不平等を生む可能性があると思います。富める者はより富み、貧しい者はより貧しくなる。そのため、政府が再分配者として果たす役割は一層大きくなるでしょう。政府が介入して、その差を縮める必要があると思います」と述べました。短期的には、政府が既得権者に対して規制緩和を推進し、イノベーションの道を開く必要があると同氏は考えており、「より優れた技術を持つ人々が前進できるようにする必要があります」としました。

AIの未来における人間の役割とは

人工知能(AI)による自動化が多くの分野で進んでおり、生産性の高い社会における人間とAIの役割が問われています。河野氏は、機械やAIが、食料の生産や流通など人々の生活を支えるのに必要な活動のほぼすべてを任せられる段階まで進歩し、人間は創造性や革新的な思考力を必要とする分野に注力することが可能となると指摘。同時に人々の活動の優先順位が仕事から家庭および個人が趣味に費やす時間を増やせる方向へ向かう未来を思い描いている、と述べました。しかし、このような移行がうまくいくには、社会が情報の自由な流れに価値を置き、全体主義ではなく民主主義を選ぶ必要がある、としました。

シーゲル氏は河野氏と同じ考えで、そのような未来においては、社会がAIを活用することで、労働集約的な活動から、いわゆる「ハイタッチ」と呼ばれる人間同士の交流に依存する活動に移行していき、そのときに日本は人々の交流や経験を重視する人間的なアプローチを活用することで、経済的に優位に立つことが出来ると予測。そして、「他国よりも準備が整っている経済圏もあれば、遅れている経済圏もあると思います。米国は、ユビキタス技術を活用する人間の経験に十分注目していないと思われるので、難しい調整になるとみられます」と述べました。

しかし、シーゲル氏にとってより本質的な問題は、「その変化を促しているのは誰か。人間はそもそもテクノロジーの恩恵を受けているのか、それとも人間が生活の向上ためにテクノロジーを開発しているのか」ということであり、「足元で新しい技術が毎日のように発表されており、本質的には私たちが、その技術の実験台になる時代にいるわけです」と述べました。加えて、ニュースを含むほぼ全てのコミュニケーション手段をソーシャルメディアに依存することの意味を誰も考えていませんでしたが、同氏は、この依存からも問題が起きていると考えており、「私たちが技術に奉仕するのではなく、技術が私たちに奉仕するように世界を進化させていく必要があるのです。時々、人間のためになる世界を作れていないのではないかと不安になることもあります」と締めくくりました。

ブルームバーグの In-conversationシリーズでは、投資、政策、経済、テクノロジーなどについて、世界的なオピニオンリーダーとの徹底議論を展開しています。

本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。