FRTB最終規則、遵守への課題:Part 2

Read the English Version published onSeptember 23, 2019

本稿はGlobal Risk RegulatorのJustin Pugsleyが執筆し、ブルームバーグは使用ライセンスを得ています。

FRTB規制適用開始が刻々と迫っています。銀行はマーケットリスクの最低所要自己資本に関する枠組みをおおむね有しており、対応は可能と考えられます。

モデル化不可能なリスクファクター(NMRF)

FRTB規制に関する本当に重要な問題、特に大きなトレーディング勘定を有するG-SIBs(グローバルなシステム上重要な銀行)にとって重要な問題は、モデル化不可能なリスクファクター(NMRF)の判定です。当初公表された規則文書は、取引量が少ない金融商品(エキゾチックなデリバティブや流動性が低くローンチ後数カ月でほとんど取引がなくなる社債など)についてはモデルが適切に機能しない内容でした。

その上、一部の銀行はNMRFが真のリスクに対処していないとして、意味があるあるいは役に立つリスク指標とは見なしていません。それでもなお、NMRF順守を余儀なくさせられています。

バーゼル委員会が当初公表した規則文書の中で銀行業界が特に問題としたのは、金融商品がモデル化不可能と判定される期間についてでした。当初の規則では、30日間取引がなければモデル化不可能と判定されました。これについて銀行側は、夏休みなどの季節要因により取引されないこともあるため、30日間では定義が厳しすぎると指摘しました。その結果、最終規則では90日間に4回以上の取引があればモデル化可能と判定され、所要自己資本の上積みを避けることができるようになりました。

「バーゼル委員会側は銀行の指摘に理解を示し定義を緩和しました。これにより季節要因による影響をある程度避けることができるようになりました。これはバーゼル委員会が示した大きな譲歩でした」と、野村證券でリスクメソドロジーのグローバルヘッドを務めるEduardo Epperlein氏は述べています。

当局側が譲歩したもう1つの重要な点は、NMRFが多数ある場合の所要自己資本の算出についてでした。例えば、100万ドルの自己資本上積みを要するNMRFが100あれば合計は1億ドルとなり、簡単に上積み額が跳ね上がってしまいます。

これについてバーゼル委員会は多くのNMRFが無相関であるという点に理解を示しました。これにより一定の所要自己資本削減効果が得られました。

トラフィック・ライト・システム

モデルあるいはポートフォリオの問題によりトレーディングデスクが内部モデル手法(IMA)を使えなくなり標準的手法(SA)に切り替えられた場合に所要自己資本額が急増するクリフ効果を抑制するため、最終規則では2018年の市中協議で提示されたトラフィック・ライト・システムが導入されました。

具体的には黄色ゾーンが導入され、トレーディングデスクが赤ゾーンに転落し所要自己資本が上積みされる前に問題点を修正することができるように、一定期間の猶予が与えられました。

野村證券のEpperlein氏は次のように述べています。「まだ理想的とは言えません。黄色ゾーンが狭すぎると思います。この点については銀行側の要望が受け入れられませんでした。1年の移行期間が認められましたが、問題点の修正は1年では難しいと考えられます」

ブルームバーグで市場リスク商品の責任者を務めるEugene Sternも黄色ゾーンのパラメータについて「認められたのは銀行側の要望の半分というところです。しかしとにかく黄色ゾーンが認められたのは成果と言えます」と、述べています。

Wolters Kluwerのファイナンス、リスク、報告部門でグローバル・バリュー・プロポジション担当のヴァイスプレジデントを務めるJeroen Van Doorsselaere氏は、「黄色ゾーンがあることにより、モデルが適切に機能しない場合に修正を加え必要であれば社内委員会の承認を得たり、あるいは短期的な市場の変動に対応したりするための時間の余裕が得られます。これにより、外れ値が1つ出たからといってすぐにクリフ効果が出ることはなくなります」と述べています。

一方、損益要因分析(PLA)テストについては銀行側の要望がほぼ通りました。

「PLAは優れたテストです。リスク管理モデルの精度を判定するもので、正しいリスクファクターを正確なコンベクシティの水準で捉えているかどうかを検証します。これによりモデルの精度が上がり有益なフィードバックが得られます」と、Epperlein氏は述べています。

Accentureで英国リスク管理プラクティスチームの責任者を務めるPeter Beardshaw氏は、PLAが変更されたことによりIMAの適用が禁止される可能性が低くなり、より実用的になったとして、次のように述べています。「規則の適用が始まれば、当局はおそらく1年の移行期間後のキャリブレーションを見に行こうとするでしょう。しかし、実際にこれがどう機能するかは予測が難しいです」

Vermegで規制報告戦略ヘッドを務めるJames Phillips氏は、銀行、特に大きなトレーディング勘定を有する大手行は、既存のシステムをFRTB規制に対応させるにあたり大きな課題に直面するだろうと警告しています。

「いずれにしても銀行は規制リスク、報告ツール、リスク管理モデルについて新規則の適用が始まる2022年までに見直すことになるでしょう。FRTBのような規制の動きはシステムを戦略的に再検討する良いきっかけになります」

Phillips氏はさらに、「FRTB規制を順守するには詳細なデータが大量に必要となるので、スプレッドシートのような過去の遺物に依存している現行の体制を銀行は再考せざるを得なくなるでしょう。維持費が高いばかりではなく、オペレーショナルリスクの温床ともなりかねません。このテーマに関する(銀行からの)提案依頼が目に見えて増え始めています」と、述べています。