アジアのETF投資家の焦点はAI、暗号資産、中国

Read the English version published on June 19, 2023.  (Terminal link only)

投資家の関心は暗号資産(仮想通貨)からAIへとシフトしているようです。

テクノロジーに焦点を当てた上場投資信託(ETF)は世界の運用資産額が年末までに3000億ドル(約42兆6000億円)に、中でも人工知能(AI)に焦点を当てたETFは2030年までに350億ドルに達すると予想される。投資家の関心は暗号資産(仮想通貨)からAIへとシフトしている。ただし、香港取引所では年末までにビットコインやイーサリアムの現物をベースとしたETFの取引を開始する可能性がある。そのほか、アジアのETF投資家が7-12月(下期)に注目するのは中国だ。中国ETFはリターンは低調に推移しているものの資金流入が続いている。

AIがテクノロジーへの資金流入促す-チャットGPTも寄与

米半導体大手のエヌビディアの株価急騰からもAIへの関心の高まりが分かるように、テクノロジー関連ETFの運用資産額が年末までに世界で3000億ドルに達する可能性がある。AIに焦点を当てたETFの運用資産額は30年までに350億ドルに達し、ファンド数は150本を超えるとみられる。AIの普及から恩恵を受けると予想される分野には、クラウドコンピューティングやハードウエア、ソフトウエアなどがある。テクノロジー関連ETFへの年初来の純資金流入は44億ドルとなっており、中でもAIに関連するものは前年から5倍の水準に拡大している。ETFの広告表記でAIやロボティクスに触れている銘柄は71本あるが、最も新しい銘柄は5月24日に新規上場したクラフトAIパイロット米国大型株ダイナミック・ベータ・アンド・インカム(AIDB US)(手数料79ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%))だ。AI企業に連動するETFは年初来で平均20%前後のリターンを上げている。

AI関連とテクノロジー関連のETFでAUMが増大

AI-Spurs-Tech-Inflows-Thanks-to-Nvidia-ChatGPTre

Source: Bloomberg Intelligence

暗号資産からAIへと注目がシフト

香港取引所のETF市場は年末までに500億ドルに達するとみられ、下期にはビットコインやイーサリアムの現物ETFが新規上場する可能性がある。CSOPビットコイン先物ETF(3066 HK)の年初来リターンは51%となっているものの、今年の資金流入は低調だ。投資家の関心がAIに向かう中、デジタル資産を巡って変化が起きている。香港はデジタル資産に関するアジアの窓口となることを目指しており、香港の証券先物委員会(SFC)はトレーディング、プラットフォーム、資産運用サービス、助言サービスなど、暗号資産を巡る取引活動を規制する包括的な枠組みを導入している。

CSOP-Bitcoin-Futures-ETFre

中国ETFに200億ドルの資金流入も

中国に焦点を当てたETFでは、中国政府が株式市場に対して十分な刺激策を打ち出せば、マネーマーケット・ファンド(MMF)から株式ETFへのシフトが起きる可能性がある。中国へのエクスポージャーのあるETF全体では、年初来の平均パフォーマンスがマイナス0.37%となっているにもかかわらず、同時期の純資金流入額は200億ドルに上る。一方、地政学的緊張によって国際機関投資家が他の地域へとシフトする懸念がある。

中国を地域的な焦点としたETFとMMF

ETFs-With-Geographical-Focus-on-Chinare

Source: Bloomberg Intelligence

 日銀、市場の混乱なければETF購入継続の可能性は低い

植田和男総裁が率いる日本銀行は、ETFの買い入れを縮小または廃止する可能性があるが、積極的に売却するとはみられていない。日銀によるETFの保有額は50兆円近くにのぼり、日本のETF市場の85%を占めていることから、日銀がETFのポジションを解消すれば市場の混乱を招く恐れがある。直近では、日銀はETFを3月13日と14日に701億円ずつ買い入れている。

BOJs-ETF-Purchasesre

トラッカー・ファンド・オブ・ホンコン、構成銘柄数100件に到達へ

トラッカー・ファンド・オブ・ホンコンは分散化が進むと予想され、今後のリバランスや拡張のペースに基づくブルームバーグ・インテリジェンス(BI)の試算によると、25年までに組み入れ銘柄数は100件に達する見込みだ。香港の最初にして最大のETFであるトラッカー・ファンド・オブ・ホンコンは、ヘルスケア銘柄のほか、イタリア高級ブランドのプラダや旅行かばんメーカーのサムソナイト・インターナショナルなど香港取引所に上場する外国企業銘柄の組み入れを通じて、銘柄数100件を達成する可能性がある。消費財セクターに加え、公益事業やエネルギー、通信などのセクターからも銘柄が追加される見込みだが、同ETFの成長をけん引するのは自動車セクターとみられる。

Projections-for-Tracker-Fund-Rebalancingre

本稿はブルームバーグ・インテリジェンスのシニアETFアナリストのRebecca SinとEric Balchunasが執筆し、ブルームバーグ ターミナルに最初に掲載されました。ターミナルユーザー様は、こちらから全文をお読みいただけます。

本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。

デモ申し込み