アクティブ投資か、パッシブ投資か-QuickTake

この記事はチャールズ・シュタインが執筆し、ブルームバーグターミナルに最初に掲載されました。

市場全体の成績を上回るように銘柄を選択する腕前を持っているかと問われて、「イエス」と答えられる人はあまり多くないだろう。では、私たちが資産の運用を委ねているアセットマネジャーにはそうした手腕があるだろうか。

アクティブ運用ファンドに投資された10兆ドルは、その答えが「イエス」であることに賭けている。しかし、ますます増えているのは「ノー」という答えだ。世界最大の資産運用会社ブラックロックも現在、アクティブエクイティー部門を縮小し、パッシブ型投資に殺到している資金の受け皿になろうとしている。

著名投資家のウォーレン・バフェット氏が支持しているアプローチで、マネーをハンモックで昼寝をさせておくのが最も賢いやり方だと同氏は考えている。

現状

今は米国内で投資されている資産全ての3分の1強がパッシブ型ファンドに委ねられている。10年前の2割程度からその割合が高まった。2017年上期にアクティブ型ファンドから流出してパッシブ型ファンドに流入した資金は、5000億ドル近くに達した。個人投資家向けに初めてインデックスファンドを開発したのは、バンガード・グループを創業したジョン・C・ボーグル氏だ。同社もブラックロックと同様に、この資金移動での最も大きな勝ち組だ。

一方、アクティブ運用に特化した企業の一部、例えばフィデリティ・インベスメンツやフランクリン・リソーシズは、投資家の離反に見舞われて、その規模を縮小している。統合もしくは閉鎖の憂き目に遭ったファンドさえある。パッシブ運用のトレンドはあらゆる種類の料金を圧迫し、取引手数料を押し下げている。パッシブ投資はヘッジファンドも脅かし、今やヘッジファンドは運用成績の悪さと手数料の高さで、ほとんど悪者扱いされている。

バフェット氏の試算では、投資家たちは過去10年間に手数料の高いウォール街の運用会社で1000億ドル以上を無駄にしたという。もっとも、全てのアクティブ運用ファンドが退潮しているわけではない。Tロウ・プライス・グループは、1937年から頼りとしてきたファンダメンタルリサーチを補強するため新たにデータサイエンティストを採用。また、モーニングスターによれば、欧州ではパッシブ投資の市場シェアが過去10年間に倍増したが、その割合自体はようやく15%に達したにすぎない。伸びをけん引したのは機関投資家だ。

背景

アクティブ投資はかつて、単に投資と呼ばれていた。つまり個々の株式や債券の銘柄の売買だ。だが最近ではミューチュアルファンドに資金を集め、運用担当者が投資家に代わって臨機応変に判断を下すことを指すのがより一般的だ。一方、パッシブ投資はインデックスを上回ることを目標とするが、各インデックスは何らかの共通点を有する証券の集合である。例えば、インデックスファンドやS&P500種株価指数の全銘柄を組み入れた上場投資信託(ETF)を購入することは、パッシブ投資である。投資家が得られる運用成績は市場全体のパフォーマンスと同じであり、それ以上でも以下でもない。

プリンストン大学のバートン・マルキール教授(経済学)は1973年の著書で「目隠ししたサルに新聞の相場欄の銘柄リストをめがけてダーツを投げさせる」ことでも、プロの資金運用者と同程度の成績を上げられると主張。市場を上回る成績を達成できる運用担当者が存在することを否定してはいないが、同教授によれば、集団全体としては市場と同じ成績になり、さらに手数料が割高な分だけマイナスが生じる。

ボーグル氏がバンガードでインデックスファンドを始めたのも、アクティブ型のミューチュアルファンドは高い手数料を課すので、実質的な運用成績は一般にインデックスファンドより悪くなるという結論に達したからだ。フィデリティの一般的なアクティブ型株式ファンドでは、100ドル投資するごとに約70セントの手数料を賦課しているようだ。一方、フィデリティの「500インデックス・ファンド」の手数料は5セント。時間が経過すればするほど、この差額を運用によって埋めることは困難になっていくだろう。

論争

S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスによる2016年の調査は、アクティブ型の株式運用者の約90%が過去1年間および5年間、10年間にインデックス目標を上回ることができなかったことを示した。こうした低迷の大きな要因は手数料だ。アクティブ運用者は次のように自己弁護する。すなわち、08年の金融危機以降は異常な時期であり、各銘柄の個別の収益見通しに基づいて取引されなかったために、多くの銘柄が横並びの値動きとなったというのだ。

また、業績の良しあしに関係なくどの企業も同じように扱うインデックスに資金が流れ込んだことで株価にゆがみが生じ、従って、割安な銘柄を突き止め、割高な銘柄を避けることができる投資家にチャンスが訪れ、「群衆の知恵」に頼ろうとする投資家は落とし穴にはまるだろうとも主張する。

億万長者のポール・シンガー氏はさらに踏み込んで、パッシブ投資を「愚挙」と呼び、「資本主義を破滅させる危険がある」と断じている。そして、次の段階として、アクティブ投資とパッシブ投資は徐々に似たものになりつつあるのではないかという疑問が生じてくる。ETFやインデックスファンドの本数と複雑さが増すにつれ、パッシブ投資家はかつてアクティブ投資家が直面していたのと同じくらい多くの投資判断を下す必要が生じ、結局は大して変わらなくなる可能性があるのだ。

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