トランスジェンダー認知の日:アライでいることの大切さ

ゲイであることをカミングアウトしているスティーブン・グローブ氏は、LGBTについて誰とでも気楽に話すことができました。ところが、妹がトランジション(ジェンダー移行)したとき、彼女をどうやってサポートできるのか、彼には分からないことだらけでした。妹のジェンダー移行期は、スティーブンが3年前にブルームバーグでLGBT & Ally Communityのメンバーに加わった時期と重なったため、妹と同様の経験を持つ仲間に話を聞くことが、彼にとって大きな助けとなりました。

「それまで自分の周りにトランジションした人がいなかったので、初めは大変でした」とスティーブンは言います。「妹がトランジションについて相談してきた当時、私はゲイとしてカミングアウトすることと、ジェンダーアイデンティティを表現することは同じことだと思っていましたが、この2つは同じではないということを妹から学び、私にはまだまだ学ぶべきことがあると思いました」。ダイバーシティ&インクルージョンを理解しようと努めることで、スティーブンは妹のことをもっとよく理解することができただけでなく、ニュースチーム内に新たに結成されたダイバーシティ推進チームにおいても、人材パイプラインを広げ、ニュースソースを多様化し、世界展開する企業において「ダイバーシティ」とはどうあるべきかを見極める上で、視野を広げる手段になったと言います。

3月31日の国際トランスジェンダー認知の日(ITDOV:International Transgender Day of Visibility)を迎えるにあたり、スティーブン自身の体験、妹の体験、そして職場においてインクルージョンとそのサポートを目指す人へのアドバイスについて、スティーブンに話を聞きました。

 

コミュニティを通して学ぶ

ブルームバーグ・ニュース スタンダード部内のダイバーシティ&トレーニングチームの一員であるスティーブンがLGBT & Ally Communityの活動に初めて参加した頃は、コミュニティがまだ発足したばかりでメンバーの数は少なかったと言います。やがて、コミュニティの中だけではなく、ブルームバーグ全体のLGBTに対する認知度とアドボカシーを高める方法を模索し、一つの手段として、LGBTコミュニティの認知度向上に役立つ国際的な記念日を探しました。そこで浮上したのがITDOVです。「ITDOVは祝福の日です」とスティーブンは言います。「トランジションの過程にある人たちを支援し、トランジションを経験した人たちを祝福するための日です」。

ブルームバーグのLGBT & Ally Communityでのスティーブンの活動は、ジェンダー・フルイド(明確にまたは全面的に男性でも女性でもなく、1つのジェンダーにとらわれないこと)でありたいと言っていた妹の体験と重なりました。「妹と私は、彼女のジェンダーアイデンティティについてオープンに話し合ってきました。そして、彼女は数年前にゲイとしてカミングアウトしたのです」とスティーブンは言います。 スティーブンがカミングアウトしたのは大学生の時でしたが、妹のトランジションの道のりは彼にとって未知の領域だったと言います。

ITDOVを祝うイベントをブルームバーグで初めて開催した際、LGBT & Ally Communityは、若い世代のLGBTに対する直接的な支援や紹介を行っているHetrick-Martin Instituteの協力を得ました。スティーブンは、トランジションを経験したひとりの若い女性の話を聞くことで、その過程をよりよく理解することができたと言います。「トランジションの過程は段階的に進むものだと思っていましたが、妹は彼女自身やそれぞれのアイデンティティが意味するところを模索しながら進み、むしろピンポンのような過程でした。そのおかげで、このイベントを開催することができ、また、社内で私と妹の体験について話す勇気をもらいました」。

このようなサポートを得たことで勇気をもらったとスティーブンは言います。その翌年、ブルームバーグのLGBT & Ally Communityはパネルディスカッションを開催し、トランジションを経験した社員やトランジションを経験した家族を持つ社員が話をしました。この経験についてスティーブンは次のように述べています。「私は妹の話をしました。聴衆を前に話すのは緊張しましたが、オープンでいられるようになりました。興味を持ってくれる人がいることが私の励みになり、同じような経験をした息子や娘を持つ社員や自身がそのような経験をした社員から、誰に相談すればよいのか分からなかったという声も聞きました。大変力づけられる体験となりました」。

スティーブンは同僚のステラ・カンパネルの助けが特に大きかったと言います。ステラはスティーブンの妹が住むブラジル出身だからです。「ステラは、誰に連絡すればよいのか、どのようにすれば社員を動かせるのかといったと情報やヒントを与えてくれました」とスティーブンは言います。

 

アライの大切さ

ブルームバーグのLGBT & Ally Community は、今年のITDOVのイベントを開催するにあたり、アライの重要性にフォーカスしているとスティーブンは言います。「友達や同僚として、どのようにすれば良いアライになれるのでしょうか」と問いかけるスティーブンは、「私の家族は常にポジティブで、私と妹を応援してくれていますが、トランジションには課題が尽きず、常に新しい別の課題が浮上します」と言います。妹のことを話すときにはどの代名詞を使えばいいのか、特定の状況で何を言えばよいのかといった家族の質問に向き合うことで、プライベートと職場の両方において、アライと擁護者がいかに重要であるかを痛感しました。「人と違うということが何を意味するかを理解しているアライを持つことは妹にとって重要なことです」。

 

スティーブンの彼の妹が住むブラジルは、必ずしも安全とは言えず、トランスジェンダーに対して必ずしも肯定的ではないため、苦労もあったとスティーブンは言います。「安全面に関してはとても心配しています。妹は機転が利きますし、友達もたくさんいます。比較的安全な場所ですが、遠く離れた場所にいるというのはつらいです」。その一方で、彼女が「自分らしくいられる」場所を探しているということが分かったとスティーブンは言います。「これは私にとって、擁護者となって妹をどのようにして支えるかを学ぶ過程で学んだ最大の教訓です」。

 

コミュニティに奉仕し、積極的に関与するというブルームバーグの核にある理念が支えになったとスティーブンは言い、Hetrick-Martin Instituteと協働したことは特に意義深い体験だったと言います。「私がカミングアウトしてから数年が経ちますが、自信に溢れ、自分自身に満足している若い人たちを目にしたことは私の励みになりました。彼らは自分たちの居場所が欲しいとお願いしているのではなく、要求しているのです。彼らの存在は、同様の機会を得ようとする妹を支える上で私の助けとなりました」「アライやサポーターに興味がある人には私と同じように関わりを持つことを勧めます。還元するだけではなく、さまざまな場所でさまざまな人に出会うことが大切です」。

 

職場でのダイバーシティを尊重する

トランスジェンダーやLGBTに対する社内の認識が高まっていることに伴い、社員、マネージャー、採用担当者は自身の仕事のやり方にもその認識を反映する必要があります。

学ぶことに対するコミットメントと話を聞く姿勢が重要だとスティーブンは言います。アライシップとは、仕事を見つけたり、住む家を見つけたり、社会に参加したりする上で見下されたりするなど、人生において苦労を余儀なくされている人の心境を理解することです。「妹を通して分かったことは、私が経験した苦労とは異なる苦労も存在するということです」。

職場では質問することが一番の方法だとスティーブンは言います。「知らないことを認め、それを調べるための適切な情報を探すことが重要です」「私に質問してくる人もたくさんいますし、豊富な体験や情報を持っている人もいます。大切なのは、この道のりは人それぞれだということを理解することです。地図があるわけでもマニュアルがあるわけでもありません。必要なのは話を聞いてくれる相手であり、それが助けとなるのです」。

 

設備環境はとても大切であり、ブルームバーグはこれを積極的に実践しているとスティーブンは言います。 例えば彼が勤めるニューヨークオフィスでは、ジェンダーの区別に配慮したトイレが導入されています。トランジションを検討している社員に対する福利厚生制度もあり、World Professional Association for Transgender Healthが推奨するジェンダー・トランジション関連の福利厚生制度をすべて完備しています。スティーブンは、「大切なのは、社員がどのような選択をするにしても、彼らが自分自身でいられる機会を提供することです」と言い、次のように述べています。「設立者であるマイケル・ブルームバーグを含むシニアマネジメントもこのサポート体制を支持しています。マイケル・ブルームバーグは トランスジェンダーの米軍入隊の禁止を批判する論説を2017年に寄稿しています。企業のトップがこのような姿勢を示すことには大きな意味があると思います」。