サーバーレスクラウドは万人向けか

本稿はCloud Pro  Sandra Vogel氏が執筆したもので、ブルームバーグは使用ライセンスを得ています。(英語原文はこちら

サーバーレスクラウドというのは、不可能な概念に聞こえます。クラウドコンピューティングをサーバーレスにすることなどできるのでしょうか。デプロイされたコードや蓄積されたデータの高速処理、検証、解釈と言った作業にはサーバーが絶対に必要です。

今日のクラウドには何らかの計算エンジンが必ず必要になるため、「サーバーレスクラウド」という言葉は意味のないマーケティング用語であり、虚偽の宣伝になりかねません。実は、この用語はある一定のタイプのクラウド展開のことを指します。すなわち、自社内にサーバーを持たず、かつクラウドプロバイダーからサーバーを購入したりレンタルしたりすることなくクラウドを使用する機能のことです。

もちろん、プロバイダー(AWS、グーグル、マイクロソフト、IBM、オラクルなど)はサーバーを使用しています。そして必要に応じてその周辺にリソースを割り当てるので、顧客はサーバーを必要とするときにだけ料金を支払えばよいのです。

なぜサーバーレスか?

クラウド環境で作業している組織にとって、サーバーレスクラウドには非常に明確な利点が幾つかあります。techUKのテクノロジーおよびイノベーション担当アソシエイトディレクターであるSue Daley氏は、サーバーレスの低コストと使いやすさに引かれる顧客が多いと説明します。

「仮想マシンのスペックを想定される最大ワークロードに合わせて料金を支払うのではなく、実行した計算分のリソースに対して料金を支払うということは、時間当たりではなくマイクロセカンドあたりで料金を払うのと同じことです。基盤となるインフラ、キャパシティ、オペレーティングシステムの管理などを一切気にせず、企業はコードを書いて開発だけすればよいのです」とDaley氏は言います。

キャップジェミニのクラウドCoEリードであるRamanan Ramakrishna氏は、複数のサイトで運営されている組織にはサーバーレスが最適であると言います。

「サーバーレスは、イベント・ドリブンのコンピューティングとマイクロサービスの考え方を開発者間に広げる推進力となります。構築中のアプリケーションを個別のサービスに分解して、サーバーレスクラウドからのデプロイおよびアクセスが可能なようにする必要があるためです。これにより、古典的なウォーターフォール開発ではなく、アジャイル開発の原則とCI/CDの導入が迅速かつ容易になります」

サーバーレスは正しい選択か?

既にサーバーレスを使っている方もいらっしゃるかもしれません。

「サードパーティーAPIをソリューションの中で使用している組織は、気付かないうちにサーバーレスソリューションを既に使っているかもしれません。しかし、サーバーレスを本格的に検討あるいは導入すべき時期がいつなのかを知るために、サーバーレスコンピューティングの実用的な意味合いを調べてみるのはいい考えだと思います」との著名なアナリストであるFreeform Dynamics のTony Lock氏は言います。

サーバーレスの主なメリットは、使用量について事前に予想を立てる必要がなく、実際に使用した分だけ料金を支払えばよいという追加プライシングオプションです。これは、コスト削減と規模拡大を同時に追求するスモールビジネスやスタートアップには特に大きなメリットですが、それに限らずあらゆる企業にとってメリットとなります。

「サーバーレスは、規模や大きさに関係なくあらゆる組織で使用可能なツールです。とは言うものの、イベントが発生したときにだけ計算能力やリソースを必要とする小規模で成長過程にある組織にこそ、最も価値がありメリットがあります。例えば、今日の成長著しいギグエコノミーの一部を成すイノベーティブな会社(カーライドシェアアプリの会社や写真やファイルをアップロードできるサイト運営会社など)は、まさしくライドシェアのように、顧客から依頼があった場合にのみ計算リソースを使うことができればそれでよいのです」とDaley氏は言います。

検討すべきポイント

サーバーレス導入にあたっては検討すべきポイントが幾つかあります。

まず、自社の事業のニーズを正しく把握することが重要です。「サーバーレスの使い方を知るために、導入が簡単ですぐに目に見える結果が出そうなところでまず試してみましょう。また、既にサーバーレスを導入した組織を探して、良くも悪くもその経験から学びましょう」とLock氏は言います。

また、自身のスキルセットについての検討も重要です。サーバーレスはまだ比較的新しいテクノロジートレンドであるため、ほとんどの組織にはサーバーレスを効率的に構築できるテクニカルスキルがありません。もちろん外部プロバイダーへのアウトソースは可能であり、多くの組織にとってはこれが最も手っ取り早いソリューションかもしれません。

「サーバーレスクラウドを、デジタルトランスフォーメーションのアジェンダの中にクラウド生まれのイニシアチブとして組み込むことが必要です。既存のアプリケーションや関連手法に無理やり適合させようとしてはいけません」とRamakrishna氏は言います。

また、すべてをサーバーレスにする必要もありません。オックスフォード大学でコンピューターサイエンスを専門とするDaniel Kroening教授は、サーバーレス戦略を導入する最善の方法は既存のシステムにサーバーレスを織り込むことだとしてこう言っています。

「サーバーレスは、開発者やシステムデザイナーが現在使っているツールキットへの貴重な追加であって、それらを代替するものではないのです」